大江麻理子キャスターがレクチャー! 世界中で広がっている「ESG投資」って何?【働く30代のニュースゼミナール vol.19】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第19回目は、世界中で広がっている「ESG投資」について大江さんと一緒に深堀りします。

目次

今月のKeyword【ESG投資】

いーえすじーとうし▶従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮して企業価値を判断する投資のこと。たとえば、Eは気候変動の抑制や環境汚染の防止、Sは働き方の改善やダイバーシティの推進、Gは公正・透明な経営や積極的な情報開示などが挙げられる。

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バイラ読者106人にアンケート

Q 「ESG投資」という言葉の意味を知っていますか?

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4分の1が「はい」と回答。言葉の意味を知っている割合は低めだが、8割以上の人が「環境問題に関連したニュースに関心がある」「日常生活で気候変動の影響を感じたことがある」と答えていて、持続可能な世の中への関心の高さがうかがえる

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    Oeʼs eyes

    もうちょっと知られているのかなと思ったら意外と少なかったですね。もしかしたら耳にしたことはあっても、具体的にSDGsやCSRとの違いまではわかりにくいなと思っていた方がいらっしゃるんじゃないかなと推察します。そういう方にもより理解を深めていただけると嬉しいですね

Q 環境問題に取り組む企業の製品を積極的に買ったりサービスを利用したりしたいと思いますか?

実際にそうしたことがある 46%

実際にそうしたことはないが、そう思う 45%

あまり思わない 9%


読者の環境問題への意識の高さがわかる結果に。実際に購入した製品にはアルミストローやCO2削減につながるボトルのコスメなどが挙がり、「ファッションアイテムを選ぶとき環境に配慮して作られ、リサイクル可能なものを選ぶ」との声も

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    Oeʼs eyes

    ほぼ半数が「実際にそうしたことがある」と答え、これからそうしたいという方を含めると約9割というこのアンケート結果は、企業にとっては無視できないものだと思います。投資家たちに注目してもらうためにも、消費者から選ばれるためにもESGの観点は経営理念の中に入れていかないといけないということだと思います

Q 国民年金の一部がESG投資で運用されていることを知っていますか?

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アンケートで初めて知った人が多かったようで、「自分の毎月払っているお金がESG投資とつながっていて驚いた」「一部とはいえ年金を投資で運用していることを知らなかった」など様々な反応が

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    Oeʼs eyes

    そこまで知ってる方がいらっしゃらないのは仕方がないと思います。今は公的なお金が何で運用されているか情報を開示して、運用先がジャッジされる世の中になっていてGPIFは運用実績をかなり細かく公表しています。HPで見ることができ、すごく面白いのでぜひチェックしていただきたいです

Q 世界的な流れとしてESG投資が推進されていることに賛成ですか?

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約8割が賛成。「ESG投資で重視されている項目を企業が満たすようになれば、世の中全体がよい方向に向かうはず」「地球に優しい経済へ価値観が変わって嬉しい」と持続可能な世の中を望む声が多数

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    Oeʼs eyes

    今や世界の本流となりつつあるESG投資。ESGを重視している企業にお金が集まる流れができているため、企業が生き残っていける条件として、地球や社会の誰かの役に立つことが欠かせなくなっています。まさに企業は社会の公器であることを大切にしているのがESG投資の考え方のような気がします

「持続可能な世の中へ。企業に働きかける環境・社会・企業統治という投資判断基準」

最近、聞く機会が増えた「ESG投資」。


「持続可能な世の中と経済活動をリンクさせるためにESG投資が重要な役割を担っていることを知っていただきたいと思い選びました」と大江さん。そもそもESGとは何の略ですか。一から教えてください。


「ESGは、英語の3つの言葉Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取ったものです。企業の経済活動が地球環境に負荷をかけすぎていたり、人を搾取したりしていないか。社会の中で正しくあろうとしている企業かどうか。そういった観点を投資の重要なポイントにしていきましょうというのがES投資の考え方です」


なぜ世界中で広がっているのですか。


「背景に、持続可能な世の中にしていくためには企業の活動のあり方を変えなければいけないという考えがあると思います。大量消費の裏で地球環境が悪化したり、不当な労働を強いられる人がいたりすることへの疑問を皆さんが抱くようになってきた。そうしたなかで、ESGの観点を大切にしている企業に投資して、その企業の活動や成長を後押しできるESG投資が重要視されるようになってきたんです」


似た文脈で話題にのぼるCSRやSDGsとESG投資はどう違うのですか。

「どの言葉も、『企業は社会の公器である』という考え方につながっています。企業は社会に有益な価値を提供し、社会から必要とされるから存在するのです。CSRは、『企業の社会的責任』と訳されます。企業が社会貢献活動を行うことで、本業の利益に直結しないものだと受け止められています。SDGsは、持続可能な世の中にしていくための色々な分野の目標。ESG投資は、前述の3つの観点でその企業が『社会の公器』かどうか見極めて投資することです」


ESGは企業の利益と直結しますか。


「利益を出せるかよりも資金調達ができるかという観点でESGを無視するわけにはいかない世の中になっているということではないでしょうか。投資家たちが企業を判断する基準がESGになっているので、企業は無視していると投資してもらえなくなります。製品やサービスを作る原資が減る事態を避けるため、企業もESGを重視した経営をするようになってきています」

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「古くは渋沢栄一の『合本主義』の思想も。ESG投資の流れは今後、世界の本流に」

実は、日本には古くから公益と経済活動を両立する思想があったと語る大江さん。

「最近、渋沢栄一さんが大河ドラマの主人公として取り上げられたり、新しい一万円札の顔になることで注目されてます。彼は『合本主義』という資本主義とは少し違う考え方を提唱しました。簡潔に言うと、資本主義は企業の利益を追求するものですが、合本主義は『利益だけでなく、公益も追求しよう』というもの。『企業は社会の公器』と通じる考え方ですね。一部に富が集まりすぎたことの反省で、合本的な考え方に世界が移行していっている気がします」

読者からは「年金の一部がESG投資で運用されていると初めて知った」との声が。

「『自分とESG投資が年金でつながっている』と思うと興味を持っていただけるかもしれないですね。現役世代が納めた年金保険料のうち年金の支払いなどに充てられなかったものが将来の世代のために積み立てられていて、その年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を行っています。年金の一部といっても運用額は世界最大級ですから、GPIFが参入したことが日本にとってESG投資への大きな流れを決定づけたと言えます。実は、世界的に見てもESG投資の旗振り役になったのがアメリカのカルパース(カルフォルニア州職員退職年金基金)など公的年金を運用する基金なんです。大きなお金を動かすクジラと言われるような投資家がESGを大切にするという旗を掲げたときから世の中ががらりと変わり動き始めて、本流になっていく。一時的なものでなく、これから先ESG投資は世界のスタンダードになっていくと思います」

アンケートでは、約9割の読者が「環境問題に取り組む企業を利用したい」と回答。

「中でも『実際に利用したことがある』とほぼ半数の方が答えていることが印象的でした。ESG投資というと投資の判断基準を指しますが、E・S・Gの3つは私たちが『この商品を購入するかどうか』と消費の際の判断基準として使うことでより持続可能な社会のためになるといえると思います。自分が手に取った製品やサービスの川上や川下がどうなっているかを考える習慣がつけば、一人ひとりの消費行動がいずれ企業を動かすことにつながるかもしれません」

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大江麻理子

おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/中田陽子〈MAETTICO〉 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2021年12月号掲載

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