「適当な恋」はもう嫌! 今度こそ「本当の恋」がしたくなる映画『ピースオブケイク』

「適当な恋」ばかりしていると、「本当の恋」のしかたが分からなくなるよ――。ジョージ朝倉さんの漫画『ピースオブケイク』を初めて読んだ当時、心に残ったのはそんなメッセージでした。連載終了から6年、女子の心を大いに揺らしたこの作品が今秋、映画となってスクリーンに登場。多部未華子さん、綾野剛さん、松坂桃李さん、木村文乃さん、菅田将暉さんなどの人気俳優が熱演し、はちきれそうにドラマチック、だけど切ない、大人が楽しめる素敵なラブストーリーになっています。皆さんは、「本当の恋」だと胸を張って言えるような恋愛、していますか……?
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
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目次

人生、仕切り直し! 「今度こそ、ちゃんとしたい!」

  
いつだって、「自分を好きになってくれた人」となんとなく付き合うのが常。25歳の主人公・志乃は、支配的な彼氏やいい加減な関係を持ちかけてくる男性たちに時々うんざりしながらも、流されるまま、いつも「適当な恋愛」ばかりしていました。しかし物語の序盤、彼女はそんな自分が心底嫌になり、恋愛も仕事も人生も、「今度こそ、ちゃんとしたい!」と奮起します。そうして“人生の仕切り直し”を始めたある日、綾野剛さん演じる年上の男性、京志郎に出会うのです。
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
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適当な恋愛ばかりしていると、「ちゃんとした、本当の恋がしたい」と心の底から思う。でも、一途になってみたところで重たがられたり、報われなかったり、悲しくて辛くてしんどくなったり。そうして疲れてヤケになって、また適当な恋の誘惑に流され、「恋愛なんてこんなもの」と割り切ったふりをしてしまう――。いざとなると深く考えずに行動してしまう志乃は、基本的にその場主義の“流され女子”。自己責任ではあるけれど、そんな彼女の心境にリアルに共感してしまう女性は、決して少なくないのではないでしょうか。

かっこ悪くなれない人に、「本当の恋」はできない!?

  
しかし、京志郎に出会ったことで、「本当の恋」に全力投球し始める志乃。好きになった当初、京志郎は別の女性と同棲中の身でしたが、志乃のこともまんざらではなさそうな様子。諦めきれず、もやもやと片思いを続ける志乃に、木村文乃さん演じる友人は、「片思いなんて、私は恋愛と呼ばない」とバッサリ言い捨てます。
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
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そう、気持ちを受け止めて投げ返してくれる相手がいなかったら、恋の想いなんて所詮「恋愛」とは呼べない、ただの“ひとりよがり”ですよね。志乃は京志郎に恋するあまり、今までの適当な恋愛ではあり得なかった、かっこ悪い言動をたくさんしてしまいます。恋はキラキラ光るものだけど、必死になればなるほど、かっこ悪いことも増える。それでも、そのひとりよがりが、たまに相手に届いてドラマチックなことが始まるから、恋はやめられないんだよなあ……なんてしみじみ。

本当の恋に出会い、「大いなる喜び」や「正面から人と向き合うこと」を知り、しかしまたその分、「空しさ」や「不信」にも苦しめられる時期が来て、かっこ悪い「本当の恋愛」から距離を置いてしまう志乃と京志郎。最後この恋の結末で、二人はどんな選択をするのでしょうか。
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会

本当の恋がすると、「意志」が生まれる!?

  
「今度こそ、ちゃんとしたい!」と奮起する志乃ですが、鑑賞後、改めて「ちゃんとした恋愛」ってどんなものなんだろう? と考えてみました。好きな相手と“不変の思い”を誓い合い、嘘も裏切りもなく、誠実な態度で信じ合い続けることが「ちゃんとした恋愛」ならば、この映画に出てくる人物は誰ひとり、“ちゃんと”はしていません。複数の男女の移り変わる思いが絡み合い、愛し合い、取っ組み合い、そして信じたり裏切ったり、追いかけたり逃げたり……。

それでも、この映画から痛烈に伝わってくるのは、「本当の恋」からしか生まれないパワー。志乃は何をしても中途半端な“流される女”でしたが、京志郎との恋を経て、公私ともに確かな歩みを始めるようになります。自分の心の声を大切にして、納得がいかないことも適当に、曖昧に流したりはしない。志乃はいつの間にか、そんな“意志”のある女性に成長していくのです。

志乃と京志郎。ふたりの名前に「志」が入っているのは、もしかしたら作者のメッセージなのかも、なんて思ってしまったのは、深読みのしすぎでしょうか!? 作品はそのほかにも高円寺や下北沢などのリアルな東京カルチャーの描写や、綾野剛さんの色気はもちろん、多部ちゃんが今までにない“大人の女性の魅力”を開花させているのも大いなる見どころです。

「かっこ悪い自分」から逃げる人には「本当の恋」はできないし、「本当の恋」をすると、人は根っこから変わることもできる。そんな夢も希望もあるメッセージを、皆さんもぜひ受け取ってみてはいかがでしょうか。見ればあなたもきっと、今度こそ「本当の恋」がしたくなる。『ピースオブケイク』は9月5日、全国公開です。
(外山ゆひら)

この記事を書いたライター

外山ゆひら
対人関係、心や生き方に関する記事執筆が中心のフリーランスライター。読売新聞が運営する「発言小町」の相談コラムや、「恋活小町」を担当する。文芸、カルチャー、エンターテイメント方面を日々ウォッチしている。

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