「独身=理想が高い」の風潮が嫌! 理想を持つのは悪いこと?

発言小町に、「『理想が高い』ってよくないことでしょうか?」という投稿が寄せられました。

トピ主さんは、「理想が高い」という言葉を批判や悪口の類とみなす風潮に疑問を感じている様子。
結婚願望がありながら独身である(特に30~40代)女性に対して「理想が高い」とコメントする場合に、批判や悪口のように捉えられてしまうのはなぜなのかと投稿しています。
曰く、「年齢を重ねた女性は不利だとしても、全く誰からも相手にされない女性はなかなかいないだろうし、相手が誰でもいいわけではないのは当然ではないか。逆に『理想が高くないのに独身』というほうが、『理想を下げても結婚できないくらい魅力がない』ということになり、失礼ではないか」……とのことで、「『理想が高い』という発言はそんなによくないことでしょうか?」と問いかけています。

目次

「理想が高い」発言の真意はさまざま


世の中には、独身というだけで「理想が高いんじゃない?」という言葉を投げかける人もいますよね。ただ、その発言の真意は皆同じというわけではなく、いくつか種類があるように思います。
(1)深くは考えていない、挨拶程度の発言
(2)マウンティングや嫉妬、けん制の気持ちが交じった発言
(3)シンプルに「独身であること」を疑問に思っての発言

まずは1。お互い様ではありますが、日常のコミュニケーションでは、誰もが自分のことを正しく認識してくれたり、最適な言葉を投げかけてくれたりするわけではありません。「デリカシーがない」と憤慨したところで、相手は大して深く考えておらず、挨拶レベルの発言であるということもあるでしょう。

一方で、時には2のように、相手より自分が優位に立とうとする心理や、嫉妬やけん制の気持ちから、「贅沢を言っていないで、適当なところで手を打ちなさいよ」なんて敵意を含んでいることもあるかもしれません。

また3のケースとして、全く悪意はなく、その人の魅力を認めていて、「結婚できそうなのに、なぜしないの?」という素直な疑問から、「理想が高いのでは?」なんて言う人もいるだろうと思います。

「理想が高い」と言われたときは、上記のような相手の真意を見極めるようにすると、「正しい対処法」が見つかりやすいかもしれません。1の場合は、「聞き流す」「気に留めない」のが最善ではないでしょうか。2の場合なら反論したくもなるでしょうが、親しくない相手ならば、まともに取り合わなくてもいいのではと思います。3の場合は、その人との関係にもよりますが、もし相手が親身に心配してくれているようなら、「気にかけてくれてありがとう」なんて返すもよし、「どうやったら出会いを増やせると思う?」「いい人いたら紹介してね」なんて軽く相談してみてもいいかもしれません。

「不遜」に見えてしまうとき、人は「理想が高い」と言う


トピ主さんは、「理想が高い」と言われがちなのは「結婚願望がありながら独身の女性」だと指摘しています。「結婚=女の幸せ」という考えの人は今も少なからずいますし、どうしても女性のほうがそんなふうに言われる傾向はあるのかもしれません。ただ、最近は独身男性も「理想が高い」と言われることがあるようです。今回は男女関係なく、「理想が高い」という言葉について考えていくことにします。

結婚相手を探している独身者には、以下3つのタイプがあるように思います。
(A)正しく自分を知っていて、「自分に合う異性」を探している人
(B)自分を客観視せず、「誰もが理想とするような異性」を望んでいる人
(C)コンプレックスや人生への不満足感が強く、「自分に足りないもの」を異性に求めている人

Aのタイプは自分の長所・短所、立場などを割と正確に理解していて、自分自身を弁(わきま)えているものの、なかなか「合う人」と出会えていないから独身――という場合ですね。こういう人たちは、決して「理想が高い」わけではないでしょう。

一方、Bタイプの場合は、自分のことは棚にあげ、「誰だってそういう異性がいいに決まってるじゃん!」というような憧れの理想像を語るために、おごりがあるように見え、不遜に思われてしまうことが多いかもしれません。

またCタイプのように、自分や人生への不満足感が強く、その部分を埋めてくれるような異性を求める人も、釣り合いの取れない相手を望みがちなため、「理想が高い」と言われることは多いのではないかと思います。

投稿には、「理想を持って相手を選り好みすることは、そんなによくないことだとでも言うのでしょうか?」という一文があります。「理想を持つこと」は少しも悪いことではないと思いますが、「選り好みする」という言い方には、「同じように自分も選り好みされている」という視点がないように聞こえるので、不遜なイメージを与えてしまいがちかもしれません。誤解を避けたいならば、独身でいる理由を聞かれたときには、選ぶ・選ばれるという観点を感じさせないよう、「自分に合う人がまだよくわかっていないのかな」「うまくマッチングしないんだよね」くらいに返しておくと、角が立ちにくいのではないかと思います。

BやCのタイプに“本当に”当てはまる人は、「結婚は今の自分の延長線上にあるもので、すべてを叶(かな)えてくれる魔法ではない」と知ることで、結婚は近づきやすいと思います。ただ、ひとつだけ書き留めておきたいのは、一見BやCに見える人でも、本当はそうでない場合もあるということです。

人は心と言葉が裏腹な場合もあり、本心では「恋愛がうまくできない」「好きな人に好きになってもらえる機会がない」などと悩んでいても、人前では、プライドから「いい男(女)がいなくてさ~」なんて強気の発言をしてしまう人もきっといるでしょう。それが誤解されて「理想が高い」と攻撃されてしまうケースも少なくないようです。デリケートな部分ではありますが、できるだけフラットで穏やかな発言を心がけていると、無用な攻撃をされる機会も少しは減らせるかもしれません。

好調なときも「慢心」せず、感謝を忘れずにいよう


最後に。人生には山谷があり、好調なときもあれば不調のときもありますよね。今の自分が好調だからといって“慢心”し、つらい時にそばにいてくれる人や、不甲斐ない自分も許容してくれる人のありがたみを忘れてしまえば、それは本当に不遜な生き方となってしまうでしょう。人は完璧ではないし、ひとりで立てなくなる瞬間もある。自分の不完全さや弱さを自覚していれば、おのずと支えてくれる相手が現れたとき、心から感謝して、自然に「そばにいてほしい」「一生一緒にいたい」などと思えて、結婚に至ることもあるのだろうと思います。

無遠慮な人も嫌味な人もいるでしょうが、もしも自分をよくわかってくれている人にまで「理想が高いのでは?」なんて言われたときは、自分を見直す機会にしてみるのもいいかもしれません。「周りの人への感謝を忘れ、一人で生きられるなんて慢心していないかな?」「自分のよさもダメなところも、ちゃんと弁(わきま)えられているかな?」――そう自問自答をして「私は大丈夫」と思えたら、あとはもう胸を張って、いろんな人がいる社会をタフに生き抜いていきましょう。
(外山ゆひら)

この記事を書いたライター

外山ゆひら
対人関係、心や生き方に関する記事執筆が中心のフリーランスライター。読売新聞が運営する「発言小町」の相談コラムや、「恋活小町」を担当する。文芸、カルチャー、エンターテイメント方面を日々ウォッチしている。

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