30歳で“おじいちゃん”!? 若者世代に刺さらないイタイSNSコンテンツとは?[専門家が解説]

最近は、多くの企業がユーチューブやツイッターといったSNSを運用するのが当たり前となっています。しかしSNSは多くの人が目にするため、常に危険と隣り合わせのメディアでもあります。何気ない投稿が問題に発展して大炎上……なんてこともよく聞く話。ユーザーから誤解なく受け入れられるコンテンツを発信するには、どうしたらいいのでしょうか。YouTubeアナリストの関口ケントさんに教えていただきました。

うちの執行役員は23歳。

今、ユーチューブ関連の仕事に、若い世代から優秀な人材が次から次に出てきています。僕らの会社、ウェンズデイの執行役員の1人は23歳の大学生です。ディズニーランドの写真をキレイに撮ってツイッターにアップし続けて人気が出た人物で、ツイッターの運用に長けていると感じて、21歳の時点で声をかけました。

最近だと、大手広告代理店との打ち合わせもすべて彼にお任せ。広告代理店も既存のメディアも、SNSの運用についてわかっていなさすぎて、会議の場でも一番若い彼が堂々と「それ違います」と主導権を握れていたりする。SNSの運用に関しては、ビジネス的な需要に対して、それができる人材供給が少ないので、はっきり言って若い世代のほうがチャンスがあります。

ステマのイタさを肌で知る層

今の10代や20代前半の若い子たちは、中学・高校くらいからリアルに、学年に1人くらいはSNSで炎上した事例を間近で見て育ってきた世代です。その失敗例をよく知っているから、SNSの使い方、危険性を肌感覚でわかっています。

僕は今、30歳ですが、この業界では“おじいちゃん”だと日々実感しています。だから、自分よりも若い子たちと組んで、彼らが肌感覚で身につけている今のSNS事情、ウェブメディア事情を教えてもらいたい。曲解されることを恐れずに言うと、今の我が社では中卒の子が一番ほしい人材です。中卒のフレッシュさこそ、今のこの業界では求められるからです。そもそも、ステルスマーケティングがなぜダメなのか、彼らは肌感覚で知っています。共感性コンテンツが好きな今の若い人からするとステマは、「なんでこんなにダサいの? イタイの?」と映っているのです。

ステマのイタイ例 1:ディズニー映画『アナと雪の女王2』でステマ騒動

2019年12月、ディズニー映画『アナと雪の女王2』でステマ騒動が起きました。映画公開直後、7人の漫画家がツイッターで一斉に“感想漫画”を投稿。同じハッシュタグを使っていたことから、「これはステルスマーケティングではないか」と指摘が相次いだ問題です。この件では、広告代理店として関与していた電通側に不手際があり、ウォルト・ディズニー・ジャパンが2度も謝罪文を発表するに至りました。ああいう騒動を見るまでもなく、今の上の世代の大人たちは、SNSにおいて痛い目にあったことがないため、潜在的に、熱いものを触るとヤケドするのだと気づくことがないわけです。対して、若い子たちはトライ&エラーをくり返しているから使い方が巧み。

ステマのイタイ例 2:ツイッター連載『100日後に死ぬワニ』

連載開始時から主人公が100日後に死ぬ、と明かされ、ツイッター連載で話題になったのちに刊行されたマンガ『100日後に死ぬワニ』(きくちゆうき/小学館)の炎上もわかりやすい例です。なぜ、最終回直後にワニは炎上したのか? ツイッター内の物語ではみんな、最後の最後までワニ君に共感していました。なのに、ワニ君が死んですぐ、「はい、映画化です」「書籍化です」「グッズ展開は何十種類と用意しています」と、まるで葬儀場で香典目当てにお金を稼ごうとするような展開をしました。その意図はなかったとしても、そう感じてしまうプロモーションをしてしまった。電通案件どうこうで騒がれましたが、それ以前に、もしあなたの大切な誰かが亡くなったとして、その瞬間にお葬式のことや香典について話を振られたら、怒りますよね。その想像がなぜできなかったのか、という話なのです。これは書籍『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』で取り上げている「嫌儲文化」にも関連しています。

だからやっぱり、つくる側は目線の高さがすごく大事。上から目線で与える姿勢じゃなく、シェア精神でコンテンツ1つ1つをクリエイトしていかなければ。ワニ君のおかげで、みんなが同じ思いを100日間シェアしていたのに、その濃密な100日をたった1日で、というか一瞬で裏切ってしまうことになる怖さ。どうしてワニ君がそこまで愛されているのかわかっていなかった。それが、もったいないのです。

きっと、作者はわかっていました。でも、その周りで動いていた人たちがわかっていなかったのです。せめて、読者1人1人がちゃんと気持ちのなかでお葬式をあげたあとであれば、香典で商売してもあそこまで炎上することはなかったはず。まず先に、人間としてピュアに共感をシェアする。お金儲けを考えるのは、そのあとのことなんです。

×「上から」ステマ/◎「共感」のシェア

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コンテンツをつくるとき、マネタイズありきで考えることも当然大事なのですが、そこを前面に出したアウトプットでクリエイションを押し進めるのは間違い。ユーチューブだったらなおさらそうです。コミュニティに対して「あなたの大切にしているコミュニティに入ってもいいですか?」とお伺いを立てるところから始めないと、偉そうなコンテンツをこれでもかと披露するだけになってしまいます。その「偉そうテイスト」こそが、レガシーメディアが嫌われている大きな要因でもあります。

「アナ雪2」「100日後に死ぬワニ」の2案件とも、奇しくも「電通のせいだ」といった騒がれ方を受けましたが、世の中の人が全部、広告がつくこと自体を嫌っているという話ではありません。広告の入り方によってはむしろ感謝されることもあるし、自分が好きなものの勢いを加速してくれる広告であれば、逆にアリアリ。

自社製品やブランドの熱烈なファンと共にコミュニティを形成する手法は「コミュニティマーケティング」と呼ばれ、これからの時代、さまざまなプロモーションにおいて、ますます大事になってくるはずです。

教えてくれたのは……

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YouTubeアナリスト
株式会社Wednesday CEO

関口ケント(せきぐち・けんと)さん

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【Profile】
1989年東京都生まれ。26歳で妖怪ウォッチ公式YouTubeチャンネルを立ち上げ、チーフプロデューサーとして流行を生み出す。2017年に株式会社テクサ(現株式会社ライバー)の執行役員に就任し、YouTuber50人ほどのチャンネルコンサルティングを担当。多くの人気YouTuberを育てる。また、ヒカルや加藤純一らも出演したクリエイターフェス『うず祭り』を企画・総合プロデュース。2019年に「株式会社Wednesday」を立ち上げCEOに就任。現在、神田伯山、関暁夫、島田秀平、登坂淳一、はなわ、KAMIWAZA、よしお兄さんなどのチャンネル運営を行うなど、YouTubeに軸足を置いて多角的に広がるビジネスを大量に推進している。

(抜粋)

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書籍『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』
著者:関口ケント

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企画・プロデュース・編集・図:石黒謙吾
構成:オグマナオト
SPECIAL THANKS:すずきB※画像・文章の無断転載はご遠慮くださいWEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト

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