【射手座】哲学派占い師SUGARさんの12星座占い<11/28~12/11> 月のパッセージ ー新月はクラい、満月はエモいー

12星座全体の運勢
「闇への畏敬を取り戻す」
今年も残すところあと約一か月。占星術的には太陽がいて座に移ると、冬も深まり冷え込み厳しくなる仲冬に入ったのだと感じますが、そんな中、12月4日にいて座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。

今回の新月のテーマは「新しいサイクルの到来と過去のカルマの噴出」。これはヒット作に恵まれて一躍売れっ子になったスターが、若い頃の苦労話や子供の頃のエピソードを掘り起こされて、波乱万丈ストーリーが作りあげられていくのに似ています。そうして、後者が前者に取り込まれるようなかたちで、壮大な叙事詩を織りなしていこうとするのです。

例えば、詩人の高橋睦郎はかつて21世紀の第二年を迎える年頭に際して書いたエッセイの中で、「前世紀への反省をこめての今世紀の第一の課題は、光への過信に対する闇への畏敬ではないだろうか」と書いていました。

ここで「光」と言っているのは、人類の進歩への無邪気な信頼であると同時に、尽きることのない人類の傲慢な欲望のこと。そして、「闇」とは人間がどうしたって暴くことのできないこの世界の不可解さであり、そういう不可解さや、簡単には説明のできないことも、この世にはあるのだと受け入れ、判断を保留にしておくだけの余白を残しておくことこそ、先に述べたような叙事詩的な感性の要となるのではないでしょうか。

今季のあなたもまた、華やかに賑わい始める街の光景のかたわらで、冬ならではの鮮やかさで心に浮かび上がってくる数々の思い出とともに、闇の感覚を研ぎ澄ませてみるといいでしょう。

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射手座(いて座)
今期のいて座のキーワードは、「ぼろぼろ」。
何かがゆっくりと、時に急速に、そして決定的に自壊していく音がする時代を、今私たちは生きているように思います。では、それはどんな音をしているのか。

近い表現をオノマトペで考えてみると、きりきり、という段階はとうに過ぎたし、ボッカーン、というほど偶発的な事故のように起きたことでもなく、どろどろ、という程にはまだひどくない。

そうすると、ぼろぼろ、というくらいが、いまの世界の感触として適切なのではないだろうか、とまで考えたところで、哲学者の鷲田清一がさまざまなオノマトペについて考察してみせた『「ぐずぐず」の理由』を開いてみると、そこにはちゃんと「ぼろぼろ」という項目があったので、以下にいくつか引用していきます。

「「ぼろぼろ」と崩れる……。それは言ってみれば自壊するのであって、高所から突き落とされたり、墜落したりするのではない。いやというほどひとに触られて、身を削られ、摩滅してゆくというのでもない。構造というものを失ってたんなる集積に変わり、足許からしだいに崩れてゆく。」

「支えを失い、柱を失い、内部と外部の差異も消え、粉々になって、やがて塵埃と化す。じぶんで身を支えられなくなるのである。夢どころか想い出も崩れれば、姿勢どころか顔じたいが崩れてくる……。ぼろぼろと。」

「「ぼろぼろ」には、からだを横たえ、俯し、あるいは仰むけて、肉も皮膚もだらんと垂れたまま、口許だけを微かに動かして、最後の吐息のように音を出す、そんな低い声が似つかわしい。」

人間が往生する瞬間も、最後はふーっと息を吐いて死んでいくと言いますが、もしかしたら私たちは、決定的に何かが死んで終わっていくそんな時代に居合わせているのかも知れません。そして、自分自身の星座であるいて座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、そうした時代精神と不思議と同期していきやすくなるでしょう。

参考:鷲田清一『「ぐずぐず」の理由』(角川選書)

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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ

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