イヤな汗がにじむ…異色のルポ「つけびの村」を読む【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】


イヤな汗がにじむ……けれど目が離せない、異色のルポ




『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』

高橋ユキ・著 ¥1600 晶文社


2013年、限界集落で起きた連続殺人・放火事件。犯人はすでに逮捕され死刑が確定しているが、真相を追うために著者は何度も集落に一人で向かい、話を聞く。そこで知る事実はTVで報道されている内容とはまったく違うものだった――。


 発売前から一部で熱狂的な話題を呼んでいたこの本。自分も手に取ったが最後、夢中でむさぼるように読みふけり、読み終わるまでは仕事をしていても食事をしていても「つけびの村」のことばかり考えてしまう中毒状態に陥ってしまった、そんな1冊だ。 

 TV、ネット、SNS、情報の渦の中で暮らす私たちは、ひどいニュースに心を痛めたとしても「犯人は異常者、原因は〇〇」と何かで報じられればとりあえず解決したような気持ちになり、いずれ忘れていく。しかし本書では熱心な取材の果てに「噂」という一つのキーワードが浮かび上がり、私たちはさらなる闇に導かれる。それは初めはほんのささやかな悪意だったが、ネットのほとんどないこの集落では娯楽でもあり、重要な情報源でもあった。読み進めるうちに彼らの奇妙な思考回路に視界を覆われ、感じたことのない不気味さに取り憑かれる。

 一つの事件を追ってこんな思いも寄らぬ場所に出てしまうこともあるのだと教えてくれる奇書だ。




一緒に読んでほしい2冊



『悪人』

吉田修一・著 ¥760 朝日新聞出版


一つの殺人事件を中心に加害者、被害者、周囲の人々、さまざまな人の境遇と性格を描く社会派ミステリ。何重もの仕掛けで「ほんとうに悪いのは誰か?」「ほんとうの悪とは何か?」を問いかける。



『慟哭』

貫井徳郎・著 ¥743 東京創元社


どんでん返しミステリの名作としても有名。連続幼女殺人事件の犯人と事件を追う刑事、二人の交互の視点で事件が描かれる。二人の視点が交差した時、予想を超えた結末に誰もが驚愕する。


はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。




選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/レ・キャトル

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