【友野一希選手独占インタビュー】「僕は諦めたことがない」努力と覚悟の先に切り拓いた新しいステージ。輝きを放ったシーズンを振り返る【フィギュアスケート男子】

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“ベテランと言われる年齢になったけど、今スケートがとても楽しい”。そう話すのは、今シーズン極上の演技で自己ベストを何度も更新し、メダル争いに食い込む選手へと成長を遂げた友野一希選手。

権威ある四大陸選手権で初のメダルを獲得し、世界選手権でも存在感を見せつけ勢いに乗る彼に独占インタビューを敢行。

アイスショーを終え、大阪に戻られたばかりの4月。拠点の浪速アイススケート場にお邪魔して貴重なお話を伺った。


拠点の浪速アイススケート場には、友野選手の活躍を祝うポスターが至る所に掲示されている。リンクには、ロステレコム杯と四大陸選手権でのメダル獲得の横断幕が
目次

友野一希 Kazuki TOMONO


大阪出身の23歳。
日本が誇る氷上のエンターテイナー。急遽出場権が巡ってきた2018年世界選手権で5位に。その後は層の厚い日本男子シングルの中で地道に基礎を磨き、練習に励んできた努力の人。今シーズンその成果が花開き、ロステレコム杯で3年ぶりに表彰台に上がると、四大陸選手権で銀メダルを獲得、初のチャンピオンシップメダリストに輝いた。


2018年補欠からの出場となったミラノでの世界選手権。自己ベストを一気に更新する会心の演技で5位に入り、翌シーズンの世界選手権の出場枠確保に貢献。一気に世界にその名を知らしめた

2018年の世界選手権含め、これまで4度“代打”出場を経験。急場でも幾度も自己ベストを更新する強さを見せてきた友野選手。ついに5度目の代替出場となった2022年の世界選手権のショートでは、世界歴代6位の得点で3位に。フリーは惜しくもミスがあり6位となったが、これから再び始まる快進撃ののろしを上げるシーズンとなった。
躍動感のある大迫力のコレオシークエンスで会場を沸かせる世界屈指のスケーター。海外でも高い評価を受け、今シーズンはすべての大会でエキシビションに出場している。

▶友野一希選手の詳しいプロフィールはこちら


飛躍の年となった2021-2022シーズン


――練習お疲れさまでした。今朝は、コンパルソリーを入念に練習されていましたね

今コンパルソリーにハマってるんです。やっていると心が落ち着くというか。スケーティングに目覚めるのが遅かったので、今すごく楽しくて。
僕に足りないのは基礎だと思うので、オフ中は基本的なことを重点的にやってます。できたときに自分でも気づかないくらいすっと滑ることができる瞬間があって、それを見つけるのが楽しいんです。


「今シーズンは変わったのは練習の密度。高い意識をもって毎日しっかりノーミスすることを目標にしていた」

――今シーズンはその努力が着実に演技構成点に現れ、飛躍につながっていますよね

毎年演技構成点が上がっていっているのは自信になっています 。少しずつ自分のスケートが認められるようになってきたので、今後もそれを突き詰めていくのが大事かな。でも今シーズンの一番のポイントは、ジャンプがハマるようになってきたことですね。


――ジャンプの着氷が安定して、加点もぐっと伸びた印象です

今年はジャンプのコツをつかんできて、特にトーループは高さや流れがよくなって高い点数が出るようになりました。でも一番は(宇野)昌磨くんや(鍵山)優真くんと練習する機会が多かったこと。一緒に練習したり、アイスショーでジャンプ対決をしたり。(三浦)佳生くんや(佐藤)駿くんとか若手の選手もどんどん出てきて、彼らは本当に加点が取れるいいジャンプを跳ぶんです。僕と昌磨くんはそれを新世代の跳び方って言ってるんです、僕たちはちょっと古風な感じというか(笑)。
彼らのなめらかで新しい跳び方を見て、体の使い方が分かってきたことが影響していると思います。今はスケートが楽しくて仕方がないです。

――日本は選手の層が厚い分、その中で戦っていくのは大変なこともあるかと思いますが、そのことがいい結果につながっているんですね

そうですね、特に優真くんが日本の基準を上げたなって。みんな彼のスケートを見てますし、これから世界一になるであろう男の練習を間近で見られることは勉強になります。彼に比べたらまだまだだなって思いますし、周囲を黙らせられるくらいの練習の質と重みに衝撃を受けます。


何十分もひたすらスケーティングの基礎を磨く姿が印象的だった早朝の練習

――今シーズンは10もの試合に出場されましたが、どんなシーズンになりましたか?

僕はもともと試合を重ねて経験を積んでいくことで成長するタイプなので、あんまり苦ではなかったです。今シーズンは特に今までと比べていい練習が詰めたかなって。序盤はちょっとかみ合わない試合もあったんですが、後半は今までで一番って思えるくらいの練習ができて、試合で成果が出せました。これくらいやらなければ上にはいけないんだっていう基準が分かったシーズンでしたし、自分の中で次のステージに上がれたかなという年になりました。


――ロステレコム杯銅メダル、四大陸選手権銀メダル、さらに世界選手権での心震わす演技と、まさしく進化のシーズンでした

2018年の世界選手権が終わってから今まで苦しかった4年間が今シーズンようやく形になったというか。「いつかは」って思ってやってきたのがよかったと思います。

――練習の成果がなかなか試合で出せず、苦しい思いもあったということですね

どれだけやってもって時期もありました。でも本番で失敗するってことは練習が足りないってことだから、常に諦めないという気持ちでやってきたので。失敗はむだではなく、毎回反省を活かしていくのが大事だと思って。その後一つずつピースがはまっていく感覚があって、毎年毎年うまくなっている自信があったので前に進んでこれました。


2022年四大陸選手権でついにチャンピオンシップ初のメダルを獲得。大きな肩書が加わった

――17年師事している平池大人コーチの支えも大きいのではないかと思います。試合後一緒に反省会をしながら次につなげていかれたのですか?

意外としなくて。先生は僕が自分で決めた道をサポートしてくださる存在。普段は見守りつつ、大事な時にはズバッてアドバイスをしてくれます。大きな大会の時でも、僕を信じてくれているのが分かるし、特別声を掛けるのではなく、しっかり見守ってくださる。それが心の支えになって、あとはただやるだけという気持ちになるんです。


ターニングポイントとなった世界選手権


三浦佳生選手欠場による世界選手権出場の知らせが飛び込んできたのは、ちょうどルクセンブルクで開かれるクープドプランタンに向かう道中。大会開幕までわずか1週間という時のことだった。世界選手権は4年ぶり、2度目の出場。「1回目の世界選手権は、何もわからないまま。でも今回は何も怖くなかった」そう語ったショートでは初の100点越えで3位。フリーではジャンプのミスがあったが、代名詞の一つであるコレオシークエンスでは会場を大いにわかせ、出場選手中トップの加点を獲得。結果は6位と、順位としては前回より一つ下がったものの、これまで積み重ねてきたものの正しさと実力を証明した、価値のある6位だった。


長年温めていた「ラ・ラ・ランド」。この4年間で大舞台が似合うスケーターへと成長し、貫禄のある滑りを見せた

「今シーズン一番印象に残っているのは、昌磨くん、優真くんと出場した世界選手権。今季ずっとあの二人を追ってやってきたので、同じ試合に出場して彼らとの差が分かったのはよかった。可能性が見えた、見えすぎた試合になった」


――ショートでは101.12点というハイスコアで自己ベスト更新。初の100点超えは予想されてましたか?

ショートの100点はちょっと予想外。でもちょっとだけ。僕は95点以上は出さなければいけないという気持ちでやってたので、何も驚かなかったですし、四大陸選手権で97.10点が出た時に、これは100点いける、来シーズンは100点いこうって思ってました。そこで100点超えを狙える試合が舞い降りてきたので、「ここだ!」って。大きな大会でいい演技をして、マックスいけば101、102点は絶対出せるって。だから得点が出た時は、現実になったことと、自分を客観的に見る力が証明されたことがうれしくて。

――シーズンが始まる前は、今シーズンのマックスは95点とおっしゃっていたと思います。その得点をゆうに超えましたね

シーズンが始まる前はそう思っていましたが、後半は101点という気持ちがありました。95点を出してしまえば、あとは積み重ねとタイミングだと思って。人が見るスポーツなので、奮い立たせるようなものがあるほうがいい点数が出ると。だから大きい大会のほうが高得点が出やすいし、だからこそあの世界選手権でいい演技をすることが自分にとって重要だったのかなって思います。


――そういった意味でも世界選手権出場は運命的な巡り合わせだったんですね

不思議ですね。僕は三浦選手に(ケガがなければ)出てほしかったし、僕は既にチャンスをもらったことがある身だったので若手にも頑張ってほしいと思っていました。最初に欠場の知らせを聞いた時は、彼に対しての心配のほうが大きかったですが、ケガ以外は元気ですって連絡が返ってきたので。もうやるしかないって。僕は僕の役目を果たして演技をするだけと切り替えました。


落ち込んだ時は、スケートを置いて自分のやりたいことをやる。「散歩、アニメ、サウナ。あとは寝たらだいたい次の日元気になるので、だめな日はしっかり寝る!」

――急遽決まった試合は調整も大変だったかと思います。全日本選手権が終わって以降は、モチベーションが下がった時期もあったと聞きました

僕は落ち込んだ時の気持ちのスイッチングは得意だと思ってるんですが、モチベーション系はどうしようもないので、ただひたすら自分と氷と向き合って、練習をするのみですね。モチベーションは誰だって下がるものなので、その時にどれだけできるか。ずっとやってたら、そのうち絶対上がってくると思うんで。リフレッシュもしつつ、自分を縛り付けすぎないように心がけてやってきました。

――モチベーションが下がったところに、世界選手権が待っていたなんて感慨深いですね

本当ですよ、気持ちがジェットコースターみたいな感じでした。正直気持ちがオフのスケート楽しみモードに入っていたので(笑)、一気に引き戻された気持ちはありました。まあでも覚悟して腹くくるしかないって。


この日の曲かけ練習は、2021-2022シーズンのショート「ニュー・シネマ・パラダイス」

――友野選手の発する“覚悟”という言葉はいつも印象に残ります。その覚悟こそが急に試合が巡ってきた場面でも力を発揮できる理由の一つだと思うのですが、友野選手にとっての覚悟”とはどんなものなのでしょう?

どんな結果も受け入れる準備。見えないものは怖いけど、何が起こっても受け入れようって準備をしておくのが覚悟だと思ってて。失敗してもいいし。何が起きても『いいよ!』っていうように自分を受け入れてあげることですかね。



――“覚悟”を決めるまでにはある程度時間がかかるものですか?

「どうしよう~」とはなりますけど、試合の練習前には決めますよ。もともと高い意識をもってやってたら覚悟なんて言わないと思うんです。今でも大きい大会では怖い気持ちがあるし、勝ち切れる努力ができているかって言われると優真くんたちに比べたらまだまだできていないと思うので、自分を奮い立たせるしかなかった。だからまだ腹をくくるしかないんです。それがなくてもいいような自信のある練習ができるようになったら、自然と覚悟は決まると思いますし、そういう言葉も少なくなっていくんじゃないかなって。


世界のエンターテイナー友野一希選手のプログラム


夢を追い求める主人公を躍動感たっぷりに演じた2021-2022シーズンのフリー「ラ・ラ・ランド」。まるで映画を見ているようなあっという間の4分間

――友野選手のコレオシークエンスには、人を巻き込んでエネルギーを増幅させていく力がありますね

そうですね、僕はスケートでもそれ以外でも、人と気持ちを共有して伝えていくのが得意なのかなって。昔から自然とできていたことだし、一つの才能かな。あとはそれを活かせる技術をしっかり磨いていかないと。
自分が本気で楽しまないと人には伝わらないと思うので、ミスがあったとしてもコレオシークエンスの瞬間だけは楽しむって決めてます。これは先生からも言われていることなんです。「最後までしっかり自分を見せてこい」って。
僕はやっぱり諦めたことがないので。絶対最後までやる。試合でどれだけ悪くても、演技はしっかりやり切ることを大事にしているから、それが伝わるんじゃないかな。


――エキシビションにもフル出場で、存在感が増したシーズンでした。それだけに来シーズンのプログラムも楽しみです

はい、間違いなく自分の存在を世界にアピールできたシーズンになったと思います。来シーズンのプログラムの曲は少しずつ決まりつつあって、来月アメリカで振付することになるかと思います。


――振付は今回もミーシャ・ジーさんですか?

多分そうなるとは思います。今シーズンを超えるさらにベストなプログラムになるようにしていきたいです。

――ちなみに今後挑戦したいプログラムはありますか?

クラシックとか。あと意外とショートはアップテンポの曲をやったことがないので、速いテンポの曲をやれたらいいなと思っています。


来シーズンに向けて


努力を強さに変えてきた友野選手。持ち前の表現力に確かな技術を携え、いざ次のシーズンへ

――来シーズンは四大陸選手権銀メダルという大きな肩書とともに戦って行くことになりますね

四大陸選手権銀メダルって本当にすごいなって思ってたんですけど、取ってしまえばやっぱり欲が出るもので、金が欲しいなって思ってしまいますし。世界選手権のメダルが欲しいという気持ちにもなりました。来シーズンに向けてトップ選手にならなければいけないし、チャンスをむだにしないシーズンにしたいです。


――いよいよ試合に4回転ループを入れる構想も?

そうですね、4回転の種類を増やすのは、勝つために必須になってくると思うんで。正直怖い気持ちもありますし、数年前まではまさか4回転を何本もやるような選手になるとは思ってなかったですから。でももう次の段階にいかなければならないし、腹くくって練習していかなきゃ。ジュニアの世代は当たり前のように4回転をポンポン跳ぶので、負けちゃいられないなって。


――次のゴールを決めるというよりも、どんどんうまくなりたいというのがモチベーションですか?

「はい、4年後って言いたいところですけど、だらだら続けるのはよくないと思ってるので、毎シーズン覚悟を持ってスケートと向き合っていくのが大事かなって思っています。

年齢的にはいつのまにかベテランと言われるくらいになりましたけど、18歳の優真くんと同期くらいの気持ちなんで。1年1年大事にして成長していけたら、自然と4年後というふうになっていくと思うので」


――来シーズンの世界選手権の舞台はいよいよさいたまです

「熱いですね。上位3人は堅いですけど、正直そこを打ち破らないと出る意味はないと思いますし、日本で勝てば世界に勝てるし。それなりの覚悟を持たなければ日本では代表になれないので、まずは国内で勝って代表をつかみ取りたいです。来シーズンはメダルを取る気持ちで頑張っていきます!」


Profile

友野一希

フィギュアスケート選手

 

1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。セントラルスポーツ 所属。

趣味は古着屋巡り、サウナ。
“浪速のエンターテイナー”の異名をもつ、表現力豊かな唯一無二のスケーター。
層の厚い日本男子の中で、地道に積み重ねてきた努力が今シーズン開花。四大陸選手権2位、世界選手権では世界歴代6位の記録でショート3位につける大躍進を遂げ、さらに注目が集まっている。
▶詳しいプロフィール&これまでの活躍はこちら


今回は特別にインタビュー番外編をご用意。大好きなファッションにまつわる話から、最近ハマっていることまで、友野選手の素顔に近づくトークを近日公開予定。とっておきの私服コーディネートもお見逃しなく!


文・撮影/轟木愛美 写真提供/アフロ  取材協力/浪速アイススケート場


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