トイレ盗撮犯に同情するオッサンと話したときのこと

聖夜のホームレスの一言

数年前のクリスマスのことです。友人との飲み会が、終電のない時間に解散になったので、「タクシーに乗るのももったいないし、気持ちがいいから、歩いて帰ろう」と思い立ちました。

新宿歌舞伎町から東中野にある我が家までは、ゆっくり歩いておおよそ30分。夜中でも人通りが多い道で帰れるので、女の一人歩きでも気が引けません。コンビニで買った缶ビールを飲みながら歩き始めました。

歌舞伎町から大久保方面に向かい、職安通りに出て西武新宿線の高架下に差し掛かると、ホームレスの男性が2人、ペットボトルで乾杯している姿が目に入りました。ペットボトルの中身は透明の液体ですが、乾杯しているくらいなので、ひょっとしてお酒かもしれません。

でも、それにしたって、クリスマスの夜に寒空の下にいるのはわびしかろう。酔っぱらってセンシティブな気持ちになっていたこともあって、わたしはすぐそばにあった自動販売機でホットコーヒーを2本買い、ホームレスたちに差し出しました。

「オジサンたち、これあげる。今日はクリスマスだから」
「おー、ネーチャン、気が利くね」

ああ、少しだけいいことをした。満足感を持ってその場を後にし、数メートル進んだところで、こんな言葉を投げかけられたのです。

「オネーチャン、お礼にマンコ舐めてあげようかーーーーー!?ギャハハハハッ」

……というひどいエピソードを、先日我が家で開かれた女だけのクリスマス飲み会で披露したら、参加者のひとりが「あー、ホントにオッサンなー……」と溜息をつきました。

そう、オッサンです。女だけで飲んでいるとついつい「オッサンってホントに嫌だよね」って話題で盛り上がりがちです。もちろん、ある中年男性の行動を、「オッサン」と一括りにして叩くのは間違っているし、ミサンドリーに陥らないように気をつけてはいる。でも、こんな行動はオッサンしかしないこともまた事実だと思うのです。

オッサンの承認はいらない

つい先日も、昔付き合っていた20歳年上の男性からメッセージが届きました。

「トイレ盗撮で捕まったってニュースになってたAって、君の知り合いじゃなかった?」

Aとは昔、バーで知り合って、彼のお宅で開かれた鍋パーティーに参加したこともあります。「昔、ほんの一瞬だけ遊んでたよね」と返信したところ、返ってきた言葉は「趣味はとても理解できるので、少々同情です」。え、トイレ盗撮の趣味が?

もちろん、後ろ暗い欲望を抱えていることを非難するつもりはありません。盗撮行為に勃起してしまうこと自体は致し方ない。でも、なんでそんなメッセージを、クソ忙しいこの年の瀬に送ってくるの。

モヤモヤしながら、「実際に盗撮したことは犯罪なので、同情はできない」ってことをわかってもらおうと、やんわり「犯罪者(笑)」と返すと「99億円隠匿したわけでも無し、ごめんでいいんじゃね」と返ってきました。

そうか、説明しないとダメか、とウンザリしながら、「あなたの娘が同じことをされても、ごめんで許せるなら、そう思っててもいいんじゃない?」とたたみかけました。すると今度は、「まあ、強姦されたわけではないし」

うんざりする返信ばっかりで、「オッサン!」と思いながら、目の前の缶ビールをぐいと飲み干し、ワインをドボドボとグラスに注ぎながら、盗撮という行為が女性にどのような恐怖を与え、どう尊厳を傷つけるかについて説明するか否か少し悩み、そしてそっとブラウザを閉じました。だって、オッサンって年下の女の言うことなんて、聞かないじゃないですか。

最も性の奔放だった頃のわたしを知っている彼にしてみれば、きっと「変態って生きづらいよね~!」と、共犯意識を持って寄り添ってくれるだろうと思ったのでしょう。だから、肩透かしを食らった気持ちかもしれません。

けれど、彼と付き合っていた頃から比べると、わたしも世の中もずいぶん変わりました。「昔は面白い女だったのに、つまらない女になった」と思うかもしれないけれど、わたしはもう、オッサンの承認はいらない。

Text/大泉りか

初出:2018.12.29

次回は<夫のお母さんの「我が家の味を教えるから手伝って」に身構えたけど…>です。
年末年始で義理の家族のところに帰省した方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。ついストレスがたまりがちな義父母との関係ですが、大泉さんの場合は少し違ったようで……?

関連記事