総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル

東京都写真美術館総合開館30周年を記念した特別なコレクション展の第二期

公式ウェブサイト https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5071.html

小本章《90-23》〈Seeing〉より 1990年 銀色素漂白方式印画

東京都写真美術館は、平成2(1990)年の一次施設開館を経て、平成7(1995)年に日本唯一の写真と映像の総合的な専門美術館として総合開館しました。総合開館30周年となる2025年は、「総合開館30周年記念」と題した展覧会や関連イベントを多数開催し、1年をとおして写真・映像の未来をさまざまにじっくりと考えます。
総合開館30周年を記念したTOPコレクション展は二期にわたって開催します。第一期「不易流行」に引き続き、第二期となる本展は学芸員4名の共同企画によるオムニバス形式で、多角的な視点から当館コレクションを選りすぐり、写真と映像の魅力をご紹介します。
本展のタイトルは「トランスフィジカル」。フィジカルには「物質的」「身体的」という意味があります。モノとして存在する写真の「物質性」や、被写体や作家自身の「身体的表現」に着目します。さらに、「トランス」という接頭辞は、対象がそのもの自体から、別の形態や位置へ移動していくプロセスや行為をさします。総合開館30周年という節目の年に、これまでのコレクション作品のあらたな読み解き方を紹介し、イメージがつくられていくその豊かな過程へ目を向けます。デジタル化が進む現在の写真・映像の在り方に、当館の珠玉の名作が鮮やかな一石を投じます。
本展のみどころ
- 4人の学芸員による多彩なテーマ

本展は4名の学芸員が共同で企画するオムニバス形式の展覧会です。初期写真から出発して写真と絵画の関係性を探る「第1室 撮ること、描くこと」、「踊り」という身体表現による衝動と社会性に迫る「第2室 dance」、色で広がる視覚表現を体感する「第3室 COLORS」、コンセプチュアル・アート*に影響を受けたステージド・フォトグラフィと実験的なビデオアートを取り上げる「第4室 虚構と現実」、デジタル時代において写真の物質性とオリジナルプリントの価値を問い直す「第5室 ヴィンテージと出会うとき」と多彩な5つのテーマで構成。38,000点を超える多彩な収蔵作品の中から選りすぐりの名品を通じて、写真・映像の歴史や社会との関わりを振り返るともに、過去の表現を現在の視点で見つめ直し、現代における表現の在り方を考えます。
*コンセプチュアル・アート(概念芸術):1960年代に登場した、物質的な表現よりも背後の概念や着想に重きを置く芸術

- 貴重なオリジナルプリントが一堂に会す

当館ならではの“お宝”とも言える貴重な作品を多数紹介。第1室では、世界最古のカラー写真《アジャンの風景》(1872年)を、第5室では、モホイ=ナジの貴重なフォトグラムや、万延元年(1860年)に撮影された《野々村忠実像》、明治初期に活躍した河野浅八の作品などを公開します。コピーが容易な現代だからこそ、写真が持つ「唯一性」や「物としての魅力」を改めて実感できる展覧会です。
- アーウィン・オラフを初展示

第4室では、KYOTOGRAPHIE 2021(京都)で注目を集めたオランダの写真家アーウィン・オラフの作品を、東京都写真美術館で初めて展示します。新型コロナウイルスのパンデミック下における自主隔離の様子をとらえた写真と映像作品〈エイプリルフール〉(2020年)*のほか、〈Im Wald〉シリーズ*から、絵画のように構成された大型作品も出品します。
*すべて作家蔵
本展の構成
第1室「撮ること、描くこと」(企画:遠藤みゆき)
現代に至るまで、互いに影響を与え合い、密接な関係を持ち続けきた写真と絵画。第1室では、最初期のカラー写真や、絵画と見まがう彩色のほどこされた写真、写真家による絵画、絵画的な画面構成によって制作された写真など、複数の視点から作品を紹介し、写真と絵画の関係を考えます。
第2室「dance」(企画:山崎香穂)
第2室では、「踊る」という行為が持つ多層的な意味に目を向けます。人々が集い、身体を動かし、声を上げ、自らの想いを表現する「踊る」という行為は、ときに社会を動かす原動力ともなるなど、時代や目的に応じて形を変えながらも様々な側面をみせてくれるでしょう。
第3室「COLORS」(企画:石田哲朗、遠藤みゆき、山崎香穂、邱于瑄(チィウ・ユーシュェン))
写真が発明された最初期から、色彩がないことは写真の欠点のひとつと考えられてきました。苦心の末に獲得された色彩によって、写真家たちの表現は花開きます。第3室では写真の色彩をテーマに、本展を担当する学芸員それぞれが選んだ作品をご紹介します。
第4室「虚構と現実」(企画:邱于瑄)
第4室ではコンセプチュアル・アート*の影響を受け、現実と虚構の境界を追求しながら、演劇的に構築された写真(ステージド・フォトグラフィ)、および映画と異なるほかのメディアに関連させて、様々な実験的な手法を用いたヴィデオ(映像)の作品群を考察します。
第5室「ヴィンテージと出会うとき」(企画:石田哲朗)
デジタル時代では「写真を焼く」という感覚や「モノとしての写真」の体験は失われつつあります。第5室では、「vintage」(ヴィンテージ)という言葉を手がかりに、年代モノ、一点モノがもつ「本物の」魅力とは何なのかを探っていきます。


ルイ・デュコ・デュ・オーロン《アジャンの風景、木と水の流れ》1872年 エリオクロミィ

山城知佳子《OKINAWA墓庭クラブ 》〈墓庭シリーズ〉より 2004年シングルチャンネル・ヴィデオ

オノデラユキ《No.CO-2》〈12 Speed〉より 2008年 インクジェット・プリント


安村崇《湯かき棒とゴム手袋》〈日常らしさ〉より 1999年 発色現像方式印画

森村泰昌《創造の劇場/イヴ・クラインとしての私》〈なにものかへのレクイエム〉より2010年 ゼラチン・シルバー・プリント

アンセル・アダムス《月とハーフドーム、ヨセミテ渓谷、カリフォルニア州》1960年 ゼラチン・シルバー・プリント (C)The Adams Publishing Rights Trust.

画像はすべて東京都写真美術館蔵
出品点数 約185点(予定)
主な出品作家(予定)
アンセル・アダムス/ウジェーヌ・アジェ/アンリ・カルティエ=ブレッソン/ルイ・デュコ・デュ・オーロン/ウィリアム・エグルストン/ロバート・メイプルソープ/アーウィン・オラフ/ゲルハルト・リヒター/シンディ・シャーマン/チェン・ウェイ/石原友明/出光真子/今井壽惠/岩根愛/瑛九/エキソニモ/オノデラユキ/川内倫子/小本章/小山穂太郎/鈴木のぞみ/田口和奈/多和田有希/東松照明/内藤正敏/野村佐紀子/浜田涼/細倉真弓/森村泰昌/安村崇/山沢栄子/山城知佳子/山本糾 ほか
関連イベント
- スペシャルトーク[日英逐次通訳付き]

7月6日(日) 14:00~15:00
ゲストをお招きし、アーウィン・オラフ作品の制作背景についてお話をうかがいます
登壇者|Shirley den Hartog(Studio Erwin Olafディレクター)、邱于瑄(当館学芸員)
会場│東京都写真美術館1Fホール
定員│190名
参加費│無料
※当日 10:00 より 1 階総合受付にて整理券を配布します
- 連続対談 過去と未来をつなぐ

「コレクションの歴史から何を学び、未来に伝えるか」をテーマに、第一線で活躍する写真・映像の研究者、教育者とTOPコレクション展の共同企画を行う当館学芸員による対談シリーズです。
7月25日(金) 18:30~20:00 登壇者│石原友明(京都市立芸術大学芸術資源研究センター 客員研究員)、遠藤みゆき(当館学芸員) 9月19日(金)
9月19日(金) 18:30~20:00 登壇者│野澤豊一(富山大学人文科学系 准教授)、山崎香穂(当館学芸員)
会場|東京都写真美術館1Fスタジオ
参加費│無料
定員|50名(事前申込制)
※申込方法等の詳細は決定次第、当館ホームページに掲載します。

- 担当学芸員によるギャラリートーク

7月18日(金) 14:00~
8月8日(金) 14:00~[手話通訳付き]
9月12日(金) 14:00~[手話通訳付き]
会場|東京都写真美術館 3階展示室
参加費|無料(要チケット提示)
※当日有効の本展展チケット(「TOPMUSEUM PASSPORT 2025」「東京・ミュージアム ぐるっとパス」を含む)または、展覧会無料対象の方は各種証明書等のご提示が必要です。

- インクルーシブプログラム「手話を交えたQ&Aショー」

9月7日(日) 14:00~15:00
耳の聞こえない鑑賞案内人の小笠原新也さんが、鑑賞者を代表して、展覧会の担当学芸員に、出品作品や展示意図などについて質問するプログラムです。
質問者│小笠原新也(耳の聞こえない鑑賞案内人)
会場│東京都写真美術館 2階ロビー
定員│50名(当日受付、先着順)
※参加方法等の詳細は決定次第、当館ホームページに掲載します。
開催概要
展覧会名(和)|総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル
展覧会名(英)|TOP 30th anniversary TOP Collection: transphysical
会 期|2025年7月3日[木]― 9月21日[日]
会 場|東京都写真美術館 3階展示室
主 催|東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
電 話|03-3280-0099 ウェブサイト|www.topmuseum.jp
総合開館30周年記念特設ウェブサイトwww.topmuseum.jp/30th_anniversary.html
開館時間|10:00-18:00(木・金曜日は20:00まで、8月14日[木]からの木・金は 21:00 まで開館)
※入館は閉館30分前まで)
休館日|毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合開館、翌平日休館)
観覧料|一般 700(560)円、学生 560(440)、高校生・65歳以上 350(280)円
    ※( )は有料入場者20名以上の団体、当館映画鑑賞券提示者、各種カード会員割引料金
※中学生以下及び障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料
※8月14日[木]-9月19日[金]の木・金曜日17:00-21:00はサマーナイトミュージアム割引(学生・高校生無料、一般・65歳以上は団体料金。学生証・年齢が確認できるものをご提示ください。)
※オンラインで日時指定チケットを購入いただけます。