「早いほうがいい」そう言われて決心したこと【LINE怖い話 #34/消えた祭り 6】
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LINE怖い話
知らない人からLINEが来る。そんなゾッとする経験をしたことはありませんか?この連載では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
知らない人からLINEが来る。そんな経験をしたことはありませんか?
多くの人は、詐欺やいたずらだと思って無視してしまうでしょう。でも、中には違和感を覚えるものもあるようです。
LINEの向こう側にいるのは、人間なのでしょうか。それとも……。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
地元観光事業所に勤めて3年目の琴子さん。
琴子さんの住む瀬里原市は、水が綺麗で穏やかな街です。6月になればホタルも飛び、毎年観光客で賑わっていました。
琴子さんが開設したオープンチャット「雑談チャット瀬里原」は、登録者100人ほどですが、ある日そこに、予言めいた発言をする「(O_O)」という人が現れました。
「ホタルがたくさん飛ぶ年は、1年以内に災厄が降りかかると言われている」と(O_O)は不吉なことを言い出しました。
災厄を起こさないために、昔の祭りの奉納方法を(O_O)に教えてもらい、試してみた琴子さんでしたが……。
「神社に行った日の夜、オープンチャットの予言者(O_O)からLINEが来ました。しかもオープンチャットではなく、個人のLINEだったんです。びっくりしました」
(O_O)は「さっき神社で少しお話しした者です。奉納ありがとうございました」と言ったそうです。
「オープンチャットは匿名だし、私も個人のLINEアカウントとは名前を変えてます。個人のアカウントを辿れるはずないのに、どうして私を見つけ出せたんだろうと不思議だったんですが……。彼女はこんなことを言いました」
その後(O_O)からの返事はありませんでしたが、琴子さんはこのLINEを「お告げ」と捉えたと言います。
「このままずっと瀬里原にいても何も変わらないと分かっていたけど、他でやっていく自信もなくて……。でも、早くここを出たほうがいいと言われて、背中を押された気持ちになりました」
琴子さんは、仕事へのモチベーションは底をついていましたし、麻美さんから旦那さんとの2人暮らしの話を聞いて、結婚への焦りは増すばかりでした。しかし今のままでは、職場と家を車で往復するだけの毎日です。
仕事と出会いを求めるなら瀬里原を出る必要があると考えていることは、麻美さんにも家族にも、誰にも言ってませんでした。
「(O_O)が私に言ってきたことを麻美にも話そうかと一瞬思いましたが、多分信じてくれないし、誰にも言わないようにと言われているのでやめました。麻美は多分、仕事は辞めたとしても瀬里原を離れはしないでしょうし」
麻美さんはもともと瀬里原市の出身ではありません。大学で知り合った今の旦那さんに付いてくる形で、就職を機にやってきました。
旦那さんは地方公務員。今は2人で駅前のマンションに暮らしていますが、市内にある旦那さんの実家に空き部屋ができたら、いずれはそこに移り住む予定です。
人生計画のある麻美さんを羨ましいと思うことはありましたが、琴子さんもお告げをきっかけに、この街を出る決心がつきました。
「災いとか神様の怒りとか、確かに気になりはしますけど、私としてはここでできることはやったつもりです。逃げるというよりは、前向きな気持ちで瀬里原を出ようと思いました」
そして、転職活動を始めた琴子さん。果たして、地元を離れることはできるのでしょうか。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(園田亜真理)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
多くの人は、詐欺やいたずらだと思って無視してしまうでしょう。でも、中には違和感を覚えるものもあるようです。
LINEの向こう側にいるのは、人間なのでしょうか。それとも……。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
「消えた祭り」その6
地元観光事業所に勤めて3年目の琴子さん。
琴子さんの住む瀬里原市は、水が綺麗で穏やかな街です。6月になればホタルも飛び、毎年観光客で賑わっていました。
琴子さんが開設したオープンチャット「雑談チャット瀬里原」は、登録者100人ほどですが、ある日そこに、予言めいた発言をする「(O_O)」という人が現れました。
「ホタルがたくさん飛ぶ年は、1年以内に災厄が降りかかると言われている」と(O_O)は不吉なことを言い出しました。
災厄を起こさないために、昔の祭りの奉納方法を(O_O)に教えてもらい、試してみた琴子さんでしたが……。
「神社に行った日の夜、オープンチャットの予言者(O_O)からLINEが来ました。しかもオープンチャットではなく、個人のLINEだったんです。びっくりしました」
(O_O)は「さっき神社で少しお話しした者です。奉納ありがとうございました」と言ったそうです。
「オープンチャットは匿名だし、私も個人のLINEアカウントとは名前を変えてます。個人のアカウントを辿れるはずないのに、どうして私を見つけ出せたんだろうと不思議だったんですが……。彼女はこんなことを言いました」
その後(O_O)からの返事はありませんでしたが、琴子さんはこのLINEを「お告げ」と捉えたと言います。
「このままずっと瀬里原にいても何も変わらないと分かっていたけど、他でやっていく自信もなくて……。でも、早くここを出たほうがいいと言われて、背中を押された気持ちになりました」
琴子さんは、仕事へのモチベーションは底をついていましたし、麻美さんから旦那さんとの2人暮らしの話を聞いて、結婚への焦りは増すばかりでした。しかし今のままでは、職場と家を車で往復するだけの毎日です。
仕事と出会いを求めるなら瀬里原を出る必要があると考えていることは、麻美さんにも家族にも、誰にも言ってませんでした。
「(O_O)が私に言ってきたことを麻美にも話そうかと一瞬思いましたが、多分信じてくれないし、誰にも言わないようにと言われているのでやめました。麻美は多分、仕事は辞めたとしても瀬里原を離れはしないでしょうし」
麻美さんはもともと瀬里原市の出身ではありません。大学で知り合った今の旦那さんに付いてくる形で、就職を機にやってきました。
旦那さんは地方公務員。今は2人で駅前のマンションに暮らしていますが、市内にある旦那さんの実家に空き部屋ができたら、いずれはそこに移り住む予定です。
人生計画のある麻美さんを羨ましいと思うことはありましたが、琴子さんもお告げをきっかけに、この街を出る決心がつきました。
「災いとか神様の怒りとか、確かに気になりはしますけど、私としてはここでできることはやったつもりです。逃げるというよりは、前向きな気持ちで瀬里原を出ようと思いました」
そして、転職活動を始めた琴子さん。果たして、地元を離れることはできるのでしょうか。
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(園田亜真理)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
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この記事を書いたライター
園田亜真理
1993年10月5日、東京都生まれ。元インテリアショップ店員。駆け出しフリーWEBライター・エディター。フリーモデル。この先の時代に、結婚せずに女1人で生きていく方法を模索中。オカルト、ホラー、廃墟が好き。