手がかりは見つけたけど…。報告と現実のズレ 【LINE怖い話 #118/廃屋敷からの報告 6】
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LINE怖い話
友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
神奈さんから“うめき声のような音がすぐ近くで聞こえる”という報告を受けた亜美さん。
神奈さんを襲った犯人が近くにいるのではないかと思い、亜美さんは必死に彼女の無事を祈っていました。
それから10分ほど経過した頃。
未だに廃屋敷からは誰も見つからず、現場の警察官たちも困惑していました。
「すべての部屋を捜索したはずですが、保護対象者も不審な人物も今のところ発見できておりません…」
「隠し通路や隠し部屋がある可能性もある。犯罪者がたまにやるパターンだ。例の不審者とやらもそこに隠れているかもしれない。壁や天井も注視して探してみてくれ」
「承知いたしました」
佐山さんの指示で捜索に戻る警察官ですが、亜美さんとしてはだんだんと警察に対する信用が薄くなっていました。
(このまま見つからなかったらどうしよう…)
不安のあまりそんなことを考え始めたその時、スマートフォンにメッセージ着信が。
「来た!神奈!」
亜美さんは思わず叫び、すぐに内容の確認を行いました。
捜索の手がかりとなるよう、神奈さんに部屋の特徴を聞き出す亜美さん。
神奈さんが言うには、大きいベッド、赤いじゅうたん、女性の絵がある部屋だと言います。
亜美さんはそのことをすぐに佐山さんに教え、LINEの画面を見せました。
佐山さんはお礼を言うと、すぐにトランシーバーで現場の警察官にその情報を共有します。
「大きいベッドと赤い絨毯、それと女性の絵が置いてある豪華な部屋にいるらしい!すぐに見つけて保護してくれ!」
しかし、それに対する警察官の返事は予想と違うものでした。
「あの佐山刑事…私が今捜索している部屋、その部屋と思わしき場所なのですが…」
「はぁ!?」
思わず声を上げた佐山さんは、詳しく話を聞こうと思わず前のめりでトランシーバーを握りなおしました。
「じゃあ、その部屋のクローゼットの中にいるはずだぞ!」
「そこもすでに調べましたが、誰もいませんでした。声を上げながら捜索を行いましたが、何の反応もありませんでしたし…」
「おい、本当にその部屋で合っているのか?別の部屋の可能性は?」
「大きなベッドと赤い絨毯が置いてある部屋はここだけのはずです。壁に絵も飾ってあるので間違いないかと。ですが部屋がかなり荒れているため私の捜索不足かもしれません。引き続き捜索を行います」
「ん?」
警察官の報告に佐山さん、そして亜美さんも違和感を覚えました。
神奈さんは最後の1文で“全体的に綺麗で豪華な部屋”と報告していました。荒れている部屋とは真逆の内容です。
「…佐山刑事?」
「あ?ああ…引き続きよろしく頼む」
佐山刑事が通信を終えると同時に、亜美さんはLINEで神奈さんにメッセージを送ります。
「ねえ、警察がその部屋にいるはずだって言ってるんだけど?」
“え?誰もいないんだけど?人の声も聞こえないし”
警察が近くにいるはずだと伝えますが、神奈さんは誰もいないと返事を送ってきます。
(どういうこと…?本当に隠し部屋か何かがあるの?)
神奈さんの報告と警察官の捜査に、明らかなズレがあると感じ始めた亜美さん。
それは佐山さんも同じで、次第に雲行きが怪しくなってきていることを実感していました。
「その部屋もそうだが、別の場所も引き続き捜索しろ!保護対象の言う部屋の特徴が間違っている可能性もある!」
「承知しました!」
佐山さんの指示が響き渡る深夜の山奥。
その様子を見ながら、亜美さんの不安はより深く、大きくなっていくのでした…。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
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「廃屋敷からの報告」その6
神奈さんから“うめき声のような音がすぐ近くで聞こえる”という報告を受けた亜美さん。
神奈さんを襲った犯人が近くにいるのではないかと思い、亜美さんは必死に彼女の無事を祈っていました。
それから10分ほど経過した頃。
未だに廃屋敷からは誰も見つからず、現場の警察官たちも困惑していました。
「すべての部屋を捜索したはずですが、保護対象者も不審な人物も今のところ発見できておりません…」
「隠し通路や隠し部屋がある可能性もある。犯罪者がたまにやるパターンだ。例の不審者とやらもそこに隠れているかもしれない。壁や天井も注視して探してみてくれ」
「承知いたしました」
佐山さんの指示で捜索に戻る警察官ですが、亜美さんとしてはだんだんと警察に対する信用が薄くなっていました。
(このまま見つからなかったらどうしよう…)
不安のあまりそんなことを考え始めたその時、スマートフォンにメッセージ着信が。
「来た!神奈!」
亜美さんは思わず叫び、すぐに内容の確認を行いました。
捜索の手がかりとなるよう、神奈さんに部屋の特徴を聞き出す亜美さん。
神奈さんが言うには、大きいベッド、赤いじゅうたん、女性の絵がある部屋だと言います。
亜美さんはそのことをすぐに佐山さんに教え、LINEの画面を見せました。
佐山さんはお礼を言うと、すぐにトランシーバーで現場の警察官にその情報を共有します。
「大きいベッドと赤い絨毯、それと女性の絵が置いてある豪華な部屋にいるらしい!すぐに見つけて保護してくれ!」
しかし、それに対する警察官の返事は予想と違うものでした。
「あの佐山刑事…私が今捜索している部屋、その部屋と思わしき場所なのですが…」
「はぁ!?」
思わず声を上げた佐山さんは、詳しく話を聞こうと思わず前のめりでトランシーバーを握りなおしました。
「じゃあ、その部屋のクローゼットの中にいるはずだぞ!」
「そこもすでに調べましたが、誰もいませんでした。声を上げながら捜索を行いましたが、何の反応もありませんでしたし…」
「おい、本当にその部屋で合っているのか?別の部屋の可能性は?」
「大きなベッドと赤い絨毯が置いてある部屋はここだけのはずです。壁に絵も飾ってあるので間違いないかと。ですが部屋がかなり荒れているため私の捜索不足かもしれません。引き続き捜索を行います」
「ん?」
警察官の報告に佐山さん、そして亜美さんも違和感を覚えました。
神奈さんは最後の1文で“全体的に綺麗で豪華な部屋”と報告していました。荒れている部屋とは真逆の内容です。
「…佐山刑事?」
「あ?ああ…引き続きよろしく頼む」
佐山刑事が通信を終えると同時に、亜美さんはLINEで神奈さんにメッセージを送ります。
「ねえ、警察がその部屋にいるはずだって言ってるんだけど?」
“え?誰もいないんだけど?人の声も聞こえないし”
警察が近くにいるはずだと伝えますが、神奈さんは誰もいないと返事を送ってきます。
(どういうこと…?本当に隠し部屋か何かがあるの?)
神奈さんの報告と警察官の捜査に、明らかなズレがあると感じ始めた亜美さん。
それは佐山さんも同じで、次第に雲行きが怪しくなってきていることを実感していました。
「その部屋もそうだが、別の場所も引き続き捜索しろ!保護対象の言う部屋の特徴が間違っている可能性もある!」
「承知しました!」
佐山さんの指示が響き渡る深夜の山奥。
その様子を見ながら、亜美さんの不安はより深く、大きくなっていくのでした…。
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(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
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この記事を書いたライター
洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。