いつもと何か違う。違和感を覚える母親の返信 【LINE怖い話 #85/母と祖母 1】

友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?

それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。

連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。


「母と祖母」その1



とある夏の土曜日。

都内の大学に在学中の美乃利さんは、自室のベッドの上で寝込んでいました。

顔は赤みを帯び、おでこには熱冷ましのシートを貼り付けています。

(あー…しんどい)

心の中で呟きながら、楽な体制になろうと寝返りをうつ美乃利さん。

体中がダルく、寝ていること以外何もしたくないという状態でした。

大人しく寝ているに限る。そう思って再び眠ろうかと思ったその時、枕元に置いておいたスマートフォンからLINEのメッセージ着信音が。

(あ、着いたかな…?)

美乃利さんはのそのそと姿勢を変え、スマートフォンを手に取り確認しました。



LINEの相手は、美乃利さんの母親でした。

父方の祖母が亡くなり、遺品整理や相続に必要な書類を探すため祖母の家に赴いているところです。

土日だけでなく、有給休暇を使用して火曜日まで泊まり込みで作業を行う予定。本来は夏休み中の美乃利さんも一緒に行って手伝いをする予定でしたが、風邪を引いてしまったため1人で作業をしに行っている状況です。

(…何で“っ”が全部大きいままなんだろう?)

返信1つ1つがかなり遅く、促音も大きい“つ”のままという誤字が目立つ母親からのメッセージ。

きっと着いてすぐに送ってきたから疲れているのだろう、そう思った美乃利さんは、すぐにねぎらいのメッセージを送りました。

「私が元気になったら改めて一緒に行くから、無理しないでね」

そう送ると、3分ほど経った後に“ありがとう”と短く感謝の言葉が返ってきました。

いつもは凄く早くメッセージを返してくる母親ですが、返信に時間がかかっているのを見るとすでに整理を始めているかもしれません。

美乃利さんは邪魔をしてはいけないと思い、それを最後に会話を切り上げました。

(…早く元気にならなきゃ)

そう思い、まぶたを閉じて大きく深呼吸を始める美乃利さん。

次第に深呼吸は寝息へと変わっていき、その日は再び目を覚ますことはありませんでした。



連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。

(洞 怜子)

※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません

この記事を書いたライター

洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。

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