ここはどこ?あなたは誰?迷い込んだ場所は…【LINE怖い話 #92/深夜の道しるべ 1】
友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
東京都内某所。
夜のネオン輝く街の大通りを、1人の女性が歩いていました。
彼女は森山凛さん。都内の大学に通う1年生です。
「はぁ、疲れたぁ~」
歩きながら大きく伸びをした後、腕を回して肩をほぐす凛さん。
そのまま大通りから外れ、住宅街に続く脇道に入っていきます。
(あ、そうだ。先輩にお礼言っておかないと)
途中でふと立ち止まり、持っていたバッグからスマートフォンを取り出しLINE画面を開きました。
(お疲れ様です。今日は品出しのフォローありがとうございました。また明日もよろしくお願いします…っと)
宛先をバイト先の先輩に指定し、お礼のメッセージを送ります。
(これでよし。早く仕事覚えないとなぁ~)
今日の仕事内容を振り返りながら、バッグにスマートフォンを戻そうとする凛さん。
しかしその時、メッセージ着信音が鳴り響きました。
(ん?先輩の返信かな?)
そう思って再びLINE画面を開きますが、
“凛、もう夜遅いわよ?早く帰ってきなさい!お父さんももう帰って来てるよ?”
“女が夜1人で出歩くのは感心しないな。まさか男でも作っていないよな?”
“お父さんもこうやって変に勘ぐるから、早く帰ってきなさい”
メッセージを送ってきた相手は、凛の両親でした。帰りが遅くなっていることに怒っているようです。
スマートフォンに表示された時計は0時を示しており、大学生が1人で出歩くには遅すぎる時間という言い分もわかります。しかし、
(夜のコンビニバイトだって説明しただろーがよ…!)
昼間は大学の講義があるため、夕方から夜の時間帯でないとバイトができないこともまた事実でした。
(はぁ…相変わらずウッザ。私も自分で稼げるようになったらあんな家出てってやる!)
心の中でそんな悪態をつきながら、すぐに帰るという旨の返信をする凛さん。
家に帰った後もまたネチネチ小言を言われると思うと気が沈み、足取りも重くなります。
「はぁ~…」
ため息をつき、思わず下を向きながら歩いてしまう凛さん。
そのままの姿勢でトボトボと家へ向かって歩きます。
それから10分後。
(あのクソ親父!そもそも私がどこで何してようが私の勝手じゃん!自分は学生のとき夜遅くまで遊んでたくせに!あんたよりマシだよ元不良がっ!)
下を向きながら歩いているうちに、凛さんの脳内は普段の両親に対する愚痴でいっぱいになっていました。
(そんなんだから愛想つかされるんだよまったく!)
ポケットに突っ込んだ両手は強く握りしめられ、眉間には大きなシワが。跡が残ってしまわないか心配になるほど深く刻まれています。
「はぁ~、帰りたくねぇ…!」
凛さんは再び大きなため息をつき、悪態をついて顔を上げました。
「…あれ?」
その時、凛さんは周囲に異変を感じました。
先程まで、自分は住宅街の中を自宅に向かって歩いていたはずです。
しかし、今いる場所は完全な暗闇の中。街の街頭の光もまったく見えない場所にいました。
「暗っ!?」
凛さんは慌ててスマートフォンを取り出し、画面の明かりで周囲を照らして場所の確認を行います。
照らし出されたのは、山道のような木々生い茂る場所。ところどころ家が建っているのが確認できますが、かなり老朽化しており壁にはツタが巻きついているほどでした。
「…ここ、どこだ?」
地方の田舎であれば、山奥の廃村ということで話が終わるような場所です。
しかし、凛さんが先ほどまで歩いていたのは都内の住宅街。近くに森も、廃村となった村もあるはずがありません。
「いや…は?ええ…?」
明らかにあり得ない、おかしな状況に困惑する凛さん。思わず周りをキョロキョロと見渡しますが、周囲には誰もおりません。
とりあえず、来た道を戻ってみよう。そう考えた凛さんは踵を返そうとしたその時、スマートフォンからメッセージ着信音が。
(こんな時に誰からだよ…また親からか?)
凛さんは内心うんざりしながらも、すぐにメッセージを確認しました。
メッセージを送って来たのは、名前のない謎のアカウント。
当然、凛さんもアカウントの相手に心当たりはありません。
しかし、謎のアカウントは廃村から出るための指示をすると送ってきました。
そして、先ほどまで歩いてきた道は崖であるというメッセージも。
「はぁ?何だこいつ?」
突然のメッセージに驚きもしましたが、それ以上に不信感を持った凛さん。
こんな素性もわからない相手の言うことを聞くのは勘弁、そう思い踵を返しましたが…。
「いっ!?」
スマートフォンの明かりで照らし出されたのは、先ほどまで歩いていたはずの道が大きく割れて崖になっている様子でした。
幅は大きく向こう側がよく見えない位置にあり、深さも夜の闇によって確認不可能なほどの大きさ。先ほどのメッセージ通り、凛さんの後ろは崖になっていました。
「えっ…えっ…!?」
訳のわからない状態に、軽いパニックになる凛さん。
そんな中、LINEに謎のアカウントからさらにメッセージが送られてきます。
“ね?崖になってるでしょ?そこからじゃ元の場所には戻れないの”
“必ず無事に帰すから、今は落ち着いて、アタシを信じて!”
凛さんの様子を見ているような文面でメッセージを送ってくる謎のアカウント。
とにかく自分を信じて、指示通りに進むよう促してきます。
「…っ!仕方ねぇ!」
実際帰る道もわからないため、こうなりゃヤケだと吹っ切れた凛さんは、謎のアカウントに従うことにしました。
そして、指示通りにそのまま道を真っすぐ進み、廃村の中へ入っていきます。
スマートフォンの明かりしか光源のない、無音の廃村の奥へ…。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
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「深夜の道しるべ」その1
東京都内某所。
夜のネオン輝く街の大通りを、1人の女性が歩いていました。
彼女は森山凛さん。都内の大学に通う1年生です。
「はぁ、疲れたぁ~」
歩きながら大きく伸びをした後、腕を回して肩をほぐす凛さん。
そのまま大通りから外れ、住宅街に続く脇道に入っていきます。
(あ、そうだ。先輩にお礼言っておかないと)
途中でふと立ち止まり、持っていたバッグからスマートフォンを取り出しLINE画面を開きました。
(お疲れ様です。今日は品出しのフォローありがとうございました。また明日もよろしくお願いします…っと)
宛先をバイト先の先輩に指定し、お礼のメッセージを送ります。
(これでよし。早く仕事覚えないとなぁ~)
今日の仕事内容を振り返りながら、バッグにスマートフォンを戻そうとする凛さん。
しかしその時、メッセージ着信音が鳴り響きました。
(ん?先輩の返信かな?)
そう思って再びLINE画面を開きますが、
“凛、もう夜遅いわよ?早く帰ってきなさい!お父さんももう帰って来てるよ?”
“女が夜1人で出歩くのは感心しないな。まさか男でも作っていないよな?”
“お父さんもこうやって変に勘ぐるから、早く帰ってきなさい”
メッセージを送ってきた相手は、凛の両親でした。帰りが遅くなっていることに怒っているようです。
スマートフォンに表示された時計は0時を示しており、大学生が1人で出歩くには遅すぎる時間という言い分もわかります。しかし、
(夜のコンビニバイトだって説明しただろーがよ…!)
昼間は大学の講義があるため、夕方から夜の時間帯でないとバイトができないこともまた事実でした。
(はぁ…相変わらずウッザ。私も自分で稼げるようになったらあんな家出てってやる!)
心の中でそんな悪態をつきながら、すぐに帰るという旨の返信をする凛さん。
家に帰った後もまたネチネチ小言を言われると思うと気が沈み、足取りも重くなります。
「はぁ~…」
ため息をつき、思わず下を向きながら歩いてしまう凛さん。
そのままの姿勢でトボトボと家へ向かって歩きます。
それから10分後。
(あのクソ親父!そもそも私がどこで何してようが私の勝手じゃん!自分は学生のとき夜遅くまで遊んでたくせに!あんたよりマシだよ元不良がっ!)
下を向きながら歩いているうちに、凛さんの脳内は普段の両親に対する愚痴でいっぱいになっていました。
(そんなんだから愛想つかされるんだよまったく!)
ポケットに突っ込んだ両手は強く握りしめられ、眉間には大きなシワが。跡が残ってしまわないか心配になるほど深く刻まれています。
「はぁ~、帰りたくねぇ…!」
凛さんは再び大きなため息をつき、悪態をついて顔を上げました。
「…あれ?」
その時、凛さんは周囲に異変を感じました。
先程まで、自分は住宅街の中を自宅に向かって歩いていたはずです。
しかし、今いる場所は完全な暗闇の中。街の街頭の光もまったく見えない場所にいました。
「暗っ!?」
凛さんは慌ててスマートフォンを取り出し、画面の明かりで周囲を照らして場所の確認を行います。
照らし出されたのは、山道のような木々生い茂る場所。ところどころ家が建っているのが確認できますが、かなり老朽化しており壁にはツタが巻きついているほどでした。
「…ここ、どこだ?」
地方の田舎であれば、山奥の廃村ということで話が終わるような場所です。
しかし、凛さんが先ほどまで歩いていたのは都内の住宅街。近くに森も、廃村となった村もあるはずがありません。
「いや…は?ええ…?」
明らかにあり得ない、おかしな状況に困惑する凛さん。思わず周りをキョロキョロと見渡しますが、周囲には誰もおりません。
とりあえず、来た道を戻ってみよう。そう考えた凛さんは踵を返そうとしたその時、スマートフォンからメッセージ着信音が。
(こんな時に誰からだよ…また親からか?)
凛さんは内心うんざりしながらも、すぐにメッセージを確認しました。
メッセージを送って来たのは、名前のない謎のアカウント。
当然、凛さんもアカウントの相手に心当たりはありません。
しかし、謎のアカウントは廃村から出るための指示をすると送ってきました。
そして、先ほどまで歩いてきた道は崖であるというメッセージも。
「はぁ?何だこいつ?」
突然のメッセージに驚きもしましたが、それ以上に不信感を持った凛さん。
こんな素性もわからない相手の言うことを聞くのは勘弁、そう思い踵を返しましたが…。
「いっ!?」
スマートフォンの明かりで照らし出されたのは、先ほどまで歩いていたはずの道が大きく割れて崖になっている様子でした。
幅は大きく向こう側がよく見えない位置にあり、深さも夜の闇によって確認不可能なほどの大きさ。先ほどのメッセージ通り、凛さんの後ろは崖になっていました。
「えっ…えっ…!?」
訳のわからない状態に、軽いパニックになる凛さん。
そんな中、LINEに謎のアカウントからさらにメッセージが送られてきます。
“ね?崖になってるでしょ?そこからじゃ元の場所には戻れないの”
“必ず無事に帰すから、今は落ち着いて、アタシを信じて!”
凛さんの様子を見ているような文面でメッセージを送ってくる謎のアカウント。
とにかく自分を信じて、指示通りに進むよう促してきます。
「…っ!仕方ねぇ!」
実際帰る道もわからないため、こうなりゃヤケだと吹っ切れた凛さんは、謎のアカウントに従うことにしました。
そして、指示通りにそのまま道を真っすぐ進み、廃村の中へ入っていきます。
スマートフォンの明かりしか光源のない、無音の廃村の奥へ…。
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(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
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この記事を書いたライター
洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。