遅い返信、変化した雰囲気、気づかない私 【LINE怖い話 #95/深夜の道しるべ 4】
友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
謎のアカウントの指示を聞き、山間の道を振り替えずに駆け抜けた凛さん。
再び周囲の景色が廃村に戻ったところで、改めて出口を探して歩き出します。
しばらく謎のアカウントの指示通りに進む凛さん。途中で白く光る幽霊を身を隠してかわしながら廃村の奥へと進んでいきます。
そしてその途中、道が突き当り左右に分かれる場所まで来ました。
“次はどっちに進めばいいんだ?”
凛さんは謎のアカウントに次の指示を仰ぐためメッセージを送ります。
しかし、今回はすぐに返事がきませんでした。
(あれ…あれ?)
3分ほど待っても、次の指示を出す返信は来ません。
その時、自分はこの謎のアカウントとのやり取りがなければ完全に孤立しているということを凛さんは自覚しました。
幽霊がうろつく廃村で、夜闇の中独りきり。それを自覚した瞬間、凛さんの恐怖は一気に膨れ上がりました。
(ちょっ…どうしっ…クソッ…!)
パニックになりながらも、わずかに残った理性でどうすればいいか考える凛さん。
そこから導き出したのは、とにかく隠れるという行動でした。立ち往生している間に幽霊に見つかったらどうなるかわかりません。
凛さんはすぐ近くにあった廃屋の中に逃げ込み、扉を閉めて中をスマートフォンの明かりで照らしました。
どうやら倉庫として使われていた建物のようで、木箱や樽がところどころに散乱しています。
凛さんは人が入れそうな大きさの木箱を見つけると、中身が空であることを確認して中に忍び込み、上から蓋を乗せて隠れます。
「…」
中に体育座りで入り込んだ凛さんは、木箱の側面にわずかに入った亀裂から外の様子を確認します。夜のため当然真っ暗であり、倉庫の中も同様に何も見えません。
とりあえず、幽霊に見つからず隠れることができて少し落ち着きを取り戻した凛さん。
(返信があるまで、ここで待つしかないか…)
そう諦め、謎のアカウントから次の指示を待とうと決意したその時、
「あぁ…あああああぁ…」
男性の顔をした幽霊が、倉庫の扉をすり抜けて中に入って来る様子を目にしました。
(っ…!)
凛さんは息を殺し、石のように体を固めて動かないようにしながら祈りました。見つかりませんようにと。
(…!)
そのまま幽霊の様子を木箱の亀裂から観察する凛さん。
幽霊はしばらくウロウロした後、倉庫の奥へと入っていき凛さんの視界から消えてしまいました。
(もしこのまま居座られたり、見つかったりしたら…!)
最悪のケースを想定し、鼓動が速くなる凛さん。体中から冷汗があふれ出し、目に汗が入りそうになります。しかし動くわけにはいきません。
(早く出てけ…早く出てけ…!)
必死にそう願いながら、とにかく待ち続ける凛さん。
そしてしばらくした後、
「あぁ…あああ…」
入って来た幽霊が、倉庫の扉をすり抜けて外に出ていく様子が確認できました。
「は、はぁー…」
凛さんは思わずため息をつき、顔の冷汗を手で拭いました。
どれだけの時間ジッとしていたのかわかりませんが、人生でこれほど時間の流れが遅いと感じたことはない、そう思うほどだと凛さんは思いました。
(…まだ返信来ないのかよ!?)
思い出したようにスマートフォンを確認する凛さん。未だに謎のアカウントからのメッセージはありません。
このままではラチが明かないため、いっそ自分の感覚を頼りに先に進んでみようか。
焦りからそんな無謀なことを凛さんが考え始めたその時、
(来たっ!)
スマートフォンに着信がありました。
謎のアカウントから追加の指示が送られてきて、思わずホッと息をつく凛さん。
早くこの廃村から出たいという思いがつのり、すぐに倉庫から出て指示通りに道を歩きます。
(もう勘弁!早くこんなところ出てってやる!)
恐怖が一周回ってしまったのか、凛さんは次第に憤りを見せるようになってきていました。
その結果、謎のアカウントが送る文章の雰囲気が変化していることに、気づくことができないでいました…。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
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「深夜の道しるべ」その4
謎のアカウントの指示を聞き、山間の道を振り替えずに駆け抜けた凛さん。
再び周囲の景色が廃村に戻ったところで、改めて出口を探して歩き出します。
しばらく謎のアカウントの指示通りに進む凛さん。途中で白く光る幽霊を身を隠してかわしながら廃村の奥へと進んでいきます。
そしてその途中、道が突き当り左右に分かれる場所まで来ました。
“次はどっちに進めばいいんだ?”
凛さんは謎のアカウントに次の指示を仰ぐためメッセージを送ります。
しかし、今回はすぐに返事がきませんでした。
(あれ…あれ?)
3分ほど待っても、次の指示を出す返信は来ません。
その時、自分はこの謎のアカウントとのやり取りがなければ完全に孤立しているということを凛さんは自覚しました。
幽霊がうろつく廃村で、夜闇の中独りきり。それを自覚した瞬間、凛さんの恐怖は一気に膨れ上がりました。
(ちょっ…どうしっ…クソッ…!)
パニックになりながらも、わずかに残った理性でどうすればいいか考える凛さん。
そこから導き出したのは、とにかく隠れるという行動でした。立ち往生している間に幽霊に見つかったらどうなるかわかりません。
凛さんはすぐ近くにあった廃屋の中に逃げ込み、扉を閉めて中をスマートフォンの明かりで照らしました。
どうやら倉庫として使われていた建物のようで、木箱や樽がところどころに散乱しています。
凛さんは人が入れそうな大きさの木箱を見つけると、中身が空であることを確認して中に忍び込み、上から蓋を乗せて隠れます。
「…」
中に体育座りで入り込んだ凛さんは、木箱の側面にわずかに入った亀裂から外の様子を確認します。夜のため当然真っ暗であり、倉庫の中も同様に何も見えません。
とりあえず、幽霊に見つからず隠れることができて少し落ち着きを取り戻した凛さん。
(返信があるまで、ここで待つしかないか…)
そう諦め、謎のアカウントから次の指示を待とうと決意したその時、
「あぁ…あああああぁ…」
男性の顔をした幽霊が、倉庫の扉をすり抜けて中に入って来る様子を目にしました。
(っ…!)
凛さんは息を殺し、石のように体を固めて動かないようにしながら祈りました。見つかりませんようにと。
(…!)
そのまま幽霊の様子を木箱の亀裂から観察する凛さん。
幽霊はしばらくウロウロした後、倉庫の奥へと入っていき凛さんの視界から消えてしまいました。
(もしこのまま居座られたり、見つかったりしたら…!)
最悪のケースを想定し、鼓動が速くなる凛さん。体中から冷汗があふれ出し、目に汗が入りそうになります。しかし動くわけにはいきません。
(早く出てけ…早く出てけ…!)
必死にそう願いながら、とにかく待ち続ける凛さん。
そしてしばらくした後、
「あぁ…あああ…」
入って来た幽霊が、倉庫の扉をすり抜けて外に出ていく様子が確認できました。
「は、はぁー…」
凛さんは思わずため息をつき、顔の冷汗を手で拭いました。
どれだけの時間ジッとしていたのかわかりませんが、人生でこれほど時間の流れが遅いと感じたことはない、そう思うほどだと凛さんは思いました。
(…まだ返信来ないのかよ!?)
思い出したようにスマートフォンを確認する凛さん。未だに謎のアカウントからのメッセージはありません。
このままではラチが明かないため、いっそ自分の感覚を頼りに先に進んでみようか。
焦りからそんな無謀なことを凛さんが考え始めたその時、
(来たっ!)
スマートフォンに着信がありました。
謎のアカウントから追加の指示が送られてきて、思わずホッと息をつく凛さん。
早くこの廃村から出たいという思いがつのり、すぐに倉庫から出て指示通りに道を歩きます。
(もう勘弁!早くこんなところ出てってやる!)
恐怖が一周回ってしまったのか、凛さんは次第に憤りを見せるようになってきていました。
その結果、謎のアカウントが送る文章の雰囲気が変化していることに、気づくことができないでいました…。
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(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
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この記事を書いたライター
洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。