どうしてここに!?助けてくれたのは、よく知る人物【LINE怖い話 #98/深夜の道しるべ 7】
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LINE怖い話
友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
謎のアカウントの指示で廃村の脱出口を目指していた凛さん。
最後の分かれ道で鳥居の建っている道を進むよう指示されますが、凛さんは嫌な予感がして進むのをためらいます。
そうしているうちに、何者かが突然凛さんの左腕を力強くつかんできました。
「ぎゃああああああぁ!?」
悲鳴を上げ、パニックになってとにかく全力で叫びながら腕を激しく振って逃れようとする凛さん。しかし、
「落ち着いて!アタシよ!」
どこかで聞き覚えのある声がし、凛さんはピタリと腕を振るのを止めました。
「え…?」
驚いて腕をつかんでいる相手にスマートフォンの明かりを向けると、そこには見知った人物が浮かび上がりました。
「姉貴!?」
それは凛さんの4つ上のお姉さん、森山蘭さんでした。
「えっ…え、本物…!?」
突然の姉の登場に、動揺を隠せない凛さん。
森の中で聞こえた友人の声の件もあり、まずは疑ってかかります。しかし、
「アタシが幽霊に見える?足もあるし白くもないよ!」
蘭さんは平然とした態度でそう感じました。確かに道中で見た幽霊とは違い足があり、白く光ってもいません。
なにより、つかまれている腕から伝わる体温で蘭さんの存在を実感し、凛さんはそれで冷静さを取り戻すことができました。
「で、でもなんでこんなとこに?家出して1人暮らししてるはずじゃ…」
「そんな話は後!とにかく、この鳥居をくぐっちゃダメ!」
凛さんの質問を遮り、蘭さんはつかんだ腕を少し引っ張って凛さんを鳥居から遠ざけました。
急な引き寄せに身を任せるしかなかった凛さんでしたが、鳥居から離れた後に疑問をぶつけます。
「いや、でもこの先にこの村の出口があるって教えられて…」
「さっきのLINEは違うの!あれは…」
蘭さんがそこまで言いかけた時、
ザワザワ!
「うわっ!また!?」
突然強い風が吹き、思わず腕で顔を覆う凛さんと蘭さん。
そしてその風が止んだ後、
「あああああ…あああああああ!」
聞き覚えのあるうめき声が、鳥居の先の階段から聞こえてきました。
凛さんが見上げると、そこからは白い幽霊が大勢現れ、こちらに迫ってきていました。
「ひっ!?」
凛さんは慌て、来た道を戻ろうと踵を返そうとしました。しかし、
「あああああ…!」
その先からも、同じように幽霊たちが凛さんたちに迫ってきていました。
「えっ…あああ…あああぁ…ああああ…!」
思わず泣きだしそうになって言葉にならない声を上げる凛さん。しかし、
「しっかりしなさい!いつもの強気なアンタはどこ行ったのよ!」
蘭さんがとっさに活を入れ、凛さんは我に返りました。
「走って!こっち!」
蘭さんは凛さんの腕をつかんだまま、暗闇へ続くもうひとつの道へ走り出しました。
最初は引きずられるように走る凛さんでしたが、次第に走る気力を取り戻し、蘭さんと並走するような形で走り出しました。
後ろからは幽霊たちのうめき声がいつまでも聞こえてきますが、それでも2人は全力で走り続けました。
(速く…速く…もっと速く!)
次第に息が上がって疲れてきましたが、それでも逃げ切るために速く走ろうと必死になる凛さん。
思わず目をつぶって下向きの姿勢になりますが、それでも足を止めずに走り続けました。
そして、後ろから幽霊たちの声が聞こえなくなったと感じた次の瞬間、
フッ…。
蘭さんにつかまれていたはずの左腕から、蘭さんの手の感覚が突然消えてしまいました。
「姉貴っ!?」
凛さんはすぐに上体を起こし、目を空けて隣を確認します。
「…あれ?」
しかし、そこには蘭さんの姿はありませんでした。
そして、周りの風景も廃村とは違う住宅街に変わっていました。
毎日のように目にする、見慣れた住宅街。自分が住んでいる家のすぐ近くの風景です。
(…帰って、きたのか?)
周囲をキョロキョロと見渡す凛さん。先ほどまでの山奥の廃村はウソのように消え去り、周囲の住宅から出る照明や街灯の光が、薄暗くも街を照らしていました。
(いや、でも姉貴は!?姉貴はどうなった!?)
無事帰って来られたことに安心するのも束の間、姉の蘭さんの安否を心配する凛さん。近くに蘭さんの姿は見当たりません。
もっと周囲をよく探そうと思って凛さんが足を進めようとしたその時、スマートフォンにメッセージ着信が。
(…もしかして)
凛さんはすぐにスマートフォンでLINE画面を開き、内容を確認しました。
謎のアカウントが姉の蘭さんであると思った凛さんは、率直にそのことを聞き出そうとしますが、謎のアカウントは肯定も否定もしませんでした。
納得できなかった凛さんはさらに追加でメッセージを送ろうとしますが、文章打ち込み部分に“トーク相手がいません”の文字が。どうやらアカウントが消えてしまったようです。
しかし、最後の1文の“親がムカつくのは同意”という部分を見て、凛さんは謎のアカウントの正体が蘭さんであると思うことにしました。
蘭さんは大学卒業後、家を出て1人暮らしを始めているはずでした。家を出た理由は、両親と一緒に暮らしたくなかったから、というものでした。
その蘭さんがどうしてあの廃村にいたのか、今は何をしているのか、無事に廃村から脱出できているのか、どうして名義不明のアカウントで連絡してきたのか、何ひとつわかることはありません。
(姉貴…)
しかし、蘭さんに助けられたという事実は、凛さんの心にしっかり残っていました。
(…きちんと礼を言いたいから、絶対また会おうな。姉貴)
凛さんはそう思いながら軽く笑みを浮かべた後、自宅へ向かってゆっくりと歩き始めました。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
「深夜の道しるべ」その7
謎のアカウントの指示で廃村の脱出口を目指していた凛さん。
最後の分かれ道で鳥居の建っている道を進むよう指示されますが、凛さんは嫌な予感がして進むのをためらいます。
そうしているうちに、何者かが突然凛さんの左腕を力強くつかんできました。
「ぎゃああああああぁ!?」
悲鳴を上げ、パニックになってとにかく全力で叫びながら腕を激しく振って逃れようとする凛さん。しかし、
「落ち着いて!アタシよ!」
どこかで聞き覚えのある声がし、凛さんはピタリと腕を振るのを止めました。
「え…?」
驚いて腕をつかんでいる相手にスマートフォンの明かりを向けると、そこには見知った人物が浮かび上がりました。
「姉貴!?」
それは凛さんの4つ上のお姉さん、森山蘭さんでした。
「えっ…え、本物…!?」
突然の姉の登場に、動揺を隠せない凛さん。
森の中で聞こえた友人の声の件もあり、まずは疑ってかかります。しかし、
「アタシが幽霊に見える?足もあるし白くもないよ!」
蘭さんは平然とした態度でそう感じました。確かに道中で見た幽霊とは違い足があり、白く光ってもいません。
なにより、つかまれている腕から伝わる体温で蘭さんの存在を実感し、凛さんはそれで冷静さを取り戻すことができました。
「で、でもなんでこんなとこに?家出して1人暮らししてるはずじゃ…」
「そんな話は後!とにかく、この鳥居をくぐっちゃダメ!」
凛さんの質問を遮り、蘭さんはつかんだ腕を少し引っ張って凛さんを鳥居から遠ざけました。
急な引き寄せに身を任せるしかなかった凛さんでしたが、鳥居から離れた後に疑問をぶつけます。
「いや、でもこの先にこの村の出口があるって教えられて…」
「さっきのLINEは違うの!あれは…」
蘭さんがそこまで言いかけた時、
ザワザワ!
「うわっ!また!?」
突然強い風が吹き、思わず腕で顔を覆う凛さんと蘭さん。
そしてその風が止んだ後、
「あああああ…あああああああ!」
聞き覚えのあるうめき声が、鳥居の先の階段から聞こえてきました。
凛さんが見上げると、そこからは白い幽霊が大勢現れ、こちらに迫ってきていました。
「ひっ!?」
凛さんは慌て、来た道を戻ろうと踵を返そうとしました。しかし、
「あああああ…!」
その先からも、同じように幽霊たちが凛さんたちに迫ってきていました。
「えっ…あああ…あああぁ…ああああ…!」
思わず泣きだしそうになって言葉にならない声を上げる凛さん。しかし、
「しっかりしなさい!いつもの強気なアンタはどこ行ったのよ!」
蘭さんがとっさに活を入れ、凛さんは我に返りました。
「走って!こっち!」
蘭さんは凛さんの腕をつかんだまま、暗闇へ続くもうひとつの道へ走り出しました。
最初は引きずられるように走る凛さんでしたが、次第に走る気力を取り戻し、蘭さんと並走するような形で走り出しました。
後ろからは幽霊たちのうめき声がいつまでも聞こえてきますが、それでも2人は全力で走り続けました。
(速く…速く…もっと速く!)
次第に息が上がって疲れてきましたが、それでも逃げ切るために速く走ろうと必死になる凛さん。
思わず目をつぶって下向きの姿勢になりますが、それでも足を止めずに走り続けました。
そして、後ろから幽霊たちの声が聞こえなくなったと感じた次の瞬間、
フッ…。
蘭さんにつかまれていたはずの左腕から、蘭さんの手の感覚が突然消えてしまいました。
「姉貴っ!?」
凛さんはすぐに上体を起こし、目を空けて隣を確認します。
「…あれ?」
しかし、そこには蘭さんの姿はありませんでした。
そして、周りの風景も廃村とは違う住宅街に変わっていました。
毎日のように目にする、見慣れた住宅街。自分が住んでいる家のすぐ近くの風景です。
(…帰って、きたのか?)
周囲をキョロキョロと見渡す凛さん。先ほどまでの山奥の廃村はウソのように消え去り、周囲の住宅から出る照明や街灯の光が、薄暗くも街を照らしていました。
(いや、でも姉貴は!?姉貴はどうなった!?)
無事帰って来られたことに安心するのも束の間、姉の蘭さんの安否を心配する凛さん。近くに蘭さんの姿は見当たりません。
もっと周囲をよく探そうと思って凛さんが足を進めようとしたその時、スマートフォンにメッセージ着信が。
(…もしかして)
凛さんはすぐにスマートフォンでLINE画面を開き、内容を確認しました。
謎のアカウントが姉の蘭さんであると思った凛さんは、率直にそのことを聞き出そうとしますが、謎のアカウントは肯定も否定もしませんでした。
納得できなかった凛さんはさらに追加でメッセージを送ろうとしますが、文章打ち込み部分に“トーク相手がいません”の文字が。どうやらアカウントが消えてしまったようです。
しかし、最後の1文の“親がムカつくのは同意”という部分を見て、凛さんは謎のアカウントの正体が蘭さんであると思うことにしました。
蘭さんは大学卒業後、家を出て1人暮らしを始めているはずでした。家を出た理由は、両親と一緒に暮らしたくなかったから、というものでした。
その蘭さんがどうしてあの廃村にいたのか、今は何をしているのか、無事に廃村から脱出できているのか、どうして名義不明のアカウントで連絡してきたのか、何ひとつわかることはありません。
(姉貴…)
しかし、蘭さんに助けられたという事実は、凛さんの心にしっかり残っていました。
(…きちんと礼を言いたいから、絶対また会おうな。姉貴)
凛さんはそう思いながら軽く笑みを浮かべた後、自宅へ向かってゆっくりと歩き始めました。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
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この記事を書いたライター
洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。