何だったの……?水平線の先に見た黒い影 【LINE怖い話 #99/肝試し準備 1】
連載
LINE怖い話
友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE……。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
4月末。近年の異常気象で、夏日がちらほらと観測され始める時期。
とある海辺の近くに立つ、大きく立派な旅館。
窓からは太陽を反射して輝く海を一望でき、ゆったりとした広さの和室が心を癒してくれる、そんな客室を備えた旅館でした。
その一室で、顔面蒼白で口を手に当てながら悶絶している女の子が。
「あうう……気持ち悪い……」
彼女は瀬尾茜さん。とある高校の水泳部に所属する2年生です。
畳の上で仰向けになり、虚ろな目で天井を見つめる茜さん。
「せっかく下見組に参加したのに……最悪ぅ……」
愚痴をこぼしつつも、体調回復のためになるべく動かずジッとしている茜さん。
彼女は水泳部顧問の先生や友達と一緒に、夏季合宿でお借りする旅館及び海水浴場の視察に来ていました。
しかし、その道中のバスで車酔いをしてしまい、こうして1人、旅館で休んでいる状態となっています。
「……」
体調回復に努めるため、無言で横になり続ける茜さん。
そんな時、手元に置いてあったスマートフォンにメッセージ着信音が。
何かと思って確認してみると、同じく下見組に来た友達と顧問の先生からのLINEでした。
連絡をしてきたのは、茜さんと同じ水泳部2年生の赤羽梓さん。
そして顧問である南川香苗先生。2人とも、水着に着替えて浜辺に向かっているところでした。
メッセージの後に送られてきた画像には、夏前でも美しく輝く海の写真が。
「楽しんでるなぁ……」
梓さんからのメッセージと海の写真を見て、自分の三半規管の弱さを呪う茜さん。
少しでも気分を変えようと、立ち上がって窓辺へ向かいます。
障子を開けて外を見ると、青く染まる海が視界いっぱいに広がりました。
波打ち際では梓さんと香苗先生だと思われる人影が駆け回り、水を掛け合って遊んでいるようです。
「はぁ~……」
自分への情けなさと梓さんたちへの羨ましさ、そして海の美しさにため息をつきながら、茜さんはボーっと水平線を眺めます。
「海、いいよね……」
誰に話すわけでもなく、ボソッと感想をこぼす茜さん。
ゆらゆらと揺れる水平線を無心で眺め続けます。
「……ん?」
しかし途中で、水平線の向こうに何かがあることに気づきました。
黒い色をしていますが、遠すぎて形まではよく分かりません。
茜さんはよく見ようと目をこすり、改めて水平線を見つめますが、その黒い何かはもう見えなくなっていました。
(見間違いかな?)
まあ大したものでもないだろうと思い、再び景色を堪能しはじめる茜さん。
しばらくは青い海を見ながら、荒れ狂う自分の波と戦うこととなりました……。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。
「肝試し準備」その1
4月末。近年の異常気象で、夏日がちらほらと観測され始める時期。
とある海辺の近くに立つ、大きく立派な旅館。
窓からは太陽を反射して輝く海を一望でき、ゆったりとした広さの和室が心を癒してくれる、そんな客室を備えた旅館でした。
その一室で、顔面蒼白で口を手に当てながら悶絶している女の子が。
「あうう……気持ち悪い……」
彼女は瀬尾茜さん。とある高校の水泳部に所属する2年生です。
畳の上で仰向けになり、虚ろな目で天井を見つめる茜さん。
「せっかく下見組に参加したのに……最悪ぅ……」
愚痴をこぼしつつも、体調回復のためになるべく動かずジッとしている茜さん。
彼女は水泳部顧問の先生や友達と一緒に、夏季合宿でお借りする旅館及び海水浴場の視察に来ていました。
しかし、その道中のバスで車酔いをしてしまい、こうして1人、旅館で休んでいる状態となっています。
「……」
体調回復に努めるため、無言で横になり続ける茜さん。
そんな時、手元に置いてあったスマートフォンにメッセージ着信音が。
何かと思って確認してみると、同じく下見組に来た友達と顧問の先生からのLINEでした。
連絡をしてきたのは、茜さんと同じ水泳部2年生の赤羽梓さん。
そして顧問である南川香苗先生。2人とも、水着に着替えて浜辺に向かっているところでした。
メッセージの後に送られてきた画像には、夏前でも美しく輝く海の写真が。
「楽しんでるなぁ……」
梓さんからのメッセージと海の写真を見て、自分の三半規管の弱さを呪う茜さん。
少しでも気分を変えようと、立ち上がって窓辺へ向かいます。
障子を開けて外を見ると、青く染まる海が視界いっぱいに広がりました。
波打ち際では梓さんと香苗先生だと思われる人影が駆け回り、水を掛け合って遊んでいるようです。
「はぁ~……」
自分への情けなさと梓さんたちへの羨ましさ、そして海の美しさにため息をつきながら、茜さんはボーっと水平線を眺めます。
「海、いいよね……」
誰に話すわけでもなく、ボソッと感想をこぼす茜さん。
ゆらゆらと揺れる水平線を無心で眺め続けます。
「……ん?」
しかし途中で、水平線の向こうに何かがあることに気づきました。
黒い色をしていますが、遠すぎて形まではよく分かりません。
茜さんはよく見ようと目をこすり、改めて水平線を見つめますが、その黒い何かはもう見えなくなっていました。
(見間違いかな?)
まあ大したものでもないだろうと思い、再び景色を堪能しはじめる茜さん。
しばらくは青い海を見ながら、荒れ狂う自分の波と戦うこととなりました……。
連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。
(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません
ライフスタイルに関する人気キーワード一覧
この記事を書いたライター
洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。