怖い!助けて!夜の山で響く悲鳴 【LINE怖い話 #105/肝試し準備 7】

友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE……。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?

それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。

連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。


「肝試し準備」その7



香苗先生の指示通りに夜の山道を進んでいた茜さん。

しかしその道の先が崖に繋がっており、恐怖を覚えた茜さんは踵を返し、元の場所まで大急ぎで戻り始めました。

パニックになりつつも残ったわずかな理性で足元を照らし、道から外れず転ばないように走る茜さん。

50分歩き続けた道を全力で駆け抜けたため、体力はみるみる減っていき、喉も痛いくらいカラカラに乾きました。

それでも、早くこの山から出たい。

その一心で茜さんは走り続けました。途中息を整えつつも、止まることは1度もありませんでした。

そしてしばらく走っているうちに、唯一の分かれ道であったT字路まで戻ってきた茜さん。

ぜぇぜぇと肩で息をしながら、何とか呼吸を整えます。

「あと……もうちょっと……」

山の出口までもう少し。
そう思った瞬間、スマートフォンからメッセージ着信音が。

「ひっ……!」

茜さんは軽く悲鳴を上げた後、恐る恐る画面を確認しました。

そこには、香苗先生からLINEメッセージを着信したとの通知が。

「……!」

自分を殺そうとした、香苗先生からのメッセージ
茜さんは怖くて仕方がありませんでしたが、先生の真意を知るためにメッセージを確認しました、




そこに書かれていたのは、香苗先生からの心配のメッセージ。

梓さんも含め、茜さんが山道に呼ばれたことは誰も知らないようでした。

“生徒を1人で山に入れるはずがない”

安全を第一に考える教師の身として、それは当然のことでした。

合宿での肝試し本番でも、部員3人でグループを作って行動することになっています。

では茜さんを誘導した、香苗先生を名乗るアカウントは何だったのか……。

茜さんは訳がわからず、その場で立ち尽くしていました。

ザワザワ……。

その時、茜さんの後ろからかすかに風が吹き、草木を揺らして音を立てました。

反射的に後ろ、つまり走って来た道を振り返る茜さん。

「……え?」

しかし、そこに先ほどまで通っていた道はありませんでした。

乱雑に草木が生い茂り“道”と呼べるようなものは、どれだけ明かりで照らしても見つかりません。まるで最初から道なんて無かったかのように……。

「うあ……ああ……あああ……!」

底知れない感覚で背筋が凍り、思わずその場に座り込んでしまった茜さん。

涙を流しながら、とっさにスマートフォンで連絡先一覧を開き、梓さんに通話を掛けました。

「助けて!怖い!怖い怖い怖い怖い!早く来て!お願い!」

通話がつながった瞬間、茜さんは力の限り叫びました。




その後、急行した梓さんと香苗先生に無事保護された茜さん。

落ち着いた後に事情を説明しましたが、香苗先生は改めて「そんな連絡はしていない」と話しました。

茜さんは証拠としてLINEでのやり取りを見せようと思いましたが、その会話履歴だけ跡形もなく消えており、結局真相はわからず終わってしまいました。


茜さんとしては、香苗先生に狙われるほど恨みを買った覚えはなく、香苗先生がそんなことをする人物であるとも思っていません。

では、茜さんを誘導した“香苗先生のアカウント”は一体何だったのか。

夏真っただ中の8月、別の場所で合宿を行っている茜さんは、気になって練習に身が入らない日々が続きました……。



連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。

(洞 怜子)

※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません

この記事を書いたライター

洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。

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