これはできるの?2回目のお願い 【LINE怖い話 #108/ストッパー 3】

友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?

それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。

連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。


「ストッパー」その3



謎のアカウント“ストッパー”に「時間を止めてほしい」というお願いをした翌日、学校のチャイムと時計が止まり試験時間が長引いた園子さん。

ストッパーは自分がやったと宣言し、あと2回願いを叶えると伝えてきました。

その日の夜、園子さんは明日に備えて寝るため布団にもぐっていました。

しかし、ストッパーのことが気になりなかなか寝付くことができません。

(本当にアイツが…?いやでも、たまたまってこともあるんじゃ…)

自分のことを把握し、大学の設備になんらかの細工ができるほどの存在であるストッパーでしたが、それでもまだ半信半疑の園子さん。

(…また何か無理のあることお願いして、そのときに確かめてみるか)

再び無理難題を押しつけ、改めてストッパーの能力が本当かどうかを検証することに決めました。

明日は試験2日目。しっかり睡眠をとり備えておきたいところです。

(明日…って、そういえば!)

何かを思い出した園子さんは、すぐにスマートフォンを手に取りとあるサイトをチェックしはじめました。

(やっぱり!明日発売じゃん。確認しといてよかったぁー…)

園子さんが確認していたのは、化粧品を扱うサイトの香水紹介ページ。

そこには、とある女優が監修を行った新作の香水が紹介されていました。

ベルガモットとハーブを使用した新作で、発売日は翌日となっております。

(前から気になってたんだよねぇ。明日、学校帰りに買おうっと)

自分へのご褒美として買おう、そう思えば試験も頑張れると心に決め、スマートフォンの画面を消して寝る体制に戻る園子さん。

(よし、明日も頑張ろう)

そう思い目を閉じると、すぐに眠気が園子さんを覆っていきました…。


翌日。

十分な睡眠をとって気分爽快となっている園子さんは、大学へ駆け足で向かっていました。

(早く大学に行って、空き教室で勉強しよう)

そう思い足を速める園子さん。通学路となる大通りへ入ります。

その途中、いつも自分が行きつけにしている化粧品店の側を通りました。今日発売の香水もここで買う予定です。しかし、

(何あれ?なんか人が並んでる…)

化粧品店の前には、すでに数人が列を作っていました。

現在時刻は8時。お店の開店は10時半からですが、それにも関わらず開店待ちをしている人がいるようです。

平日の朝からよくやるなぁと思って見ていましたが、列を作っている人たちに園子さんは違和感を覚えました。

(…ダサい人、多くない?)

列を作っている人たちの多くは、お洒落に興味がなさそうな外見をしていました。安物のゴムサンダルを履いている人や、髪の毛がかなり傷んでいる状態で放置している女性が多数見受けられます。

男性のほうも、無精ひげ、Tシャツ一枚にジーンズ姿といった、明らかにお洒落に気を使っているとは思えないような外見でした。

外見で人を判断してはいけないとはいえ、化粧品店を前に明らかに異様な光景が広がっています。

それを見て園子さんは、ある結論にたどり着きました。

(まさか、転売屋!?)

転売屋とは、今回の化粧品店のような小売店で商品を買い占め、品薄になったところにフリーマーケットアプリなどで何倍もの値段で転売を行う人たちのことです。

本来商品を買いたい人たちの手元に届かず、釣り上げられた差額も販売元には届かず、商品シェアも広がらないため業者にも使用者にも迷惑な人たちです。

おそらく、有名女優が監修した商品として品薄になればプレミア価格がつくと考え、今日発売の香水に目をつけたのでしょう。

(学校帰りに買いに行っても、全部買い占められちゃう…!)

園子さん自身も新作の香水は絶対欲しいところですが、このままだと購入する前に品切れになってしまいます。

どうしたものかと頭を抱える園子さん。しばらく考え込んだ後、あることを思い出しました。

(そうだ、ダメ元で頼んでみるか…?)

園子さんはすぐにスマートフォンを取り出し、LINE画面を開きました。



ストッパーにダメ元で転売屋の買い占めを阻止してもらえないかと頼んだ園子さん。

それにストッパーはふたつ返事で了承し、お安い御用だと返信してきました。

内心不安でしたが、とりあえず信じることにしてその場を後に大学へ向かう園子さん。

果たして、ストッパーは本当に買い占めを止めることができるのでしょうか…?




連載「LINE怖い話」は毎日更新中です。

(洞 怜子)

※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません

この記事を書いたライター

洞 怜子
怖い話を集めたり想像したり執筆したりするのが好きなホラー作家。

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