若者に多い「蛙化現象(かえるかげんしょう)」とは?陥りやすい人の特徴と克服方法
最近よく耳にする「蛙化現象(かえるかげんしょう)」ですが、それってなんのこと?と思う人も多いのではないでしょうか。蛙化現象とは、片思いの男性が振り向いてくれた途端に彼のことを「気持ち悪い」「嫌い」と感じてしまう現象のことを指します。
蛙化現象について、心理学的に解説しているものはたくさんありますがなんかピンとこない…なんてことも。今回は心理学の大元であるとされている哲学の方面から一緒に見ていきたいと思います。
蛙化現象に陥る原因は憧れと嫌悪感です。片思いの相手のことがものすごく好きで、寝ても覚めても相手のことを考えてしまう。彼がまるで少女マンガに登場する白馬の王子様のように見える。このように感じることは、端的に憧れと呼ばれていますね。
この憧れから出発する現象が蛙化現象なのです。あろうことか片思いの相手が、自分に振り向いちゃうんですね。「あ、実は僕も君のことが好きだった」なんて言って。
その瞬間、当人の気持ちは冷めるだけでなく、相手に対して「何この人。私のことが好きなの?気持ちが悪い…!」と思ってしまう。片思いの相手に対して嫌悪感を抱く、これが蛙化現象です。
その原因は、憧れと嫌悪感です。ちなみに、当人の気持ちが冷めてしまうとの、相手に嫌悪感を抱いてしまう原因も憧れなんですね。憧れる気持ちが強いゆえに、気持ちの冷めと嫌悪が生まれるのです。では、憧れる気持ちとは一体なんなのでしょうか?
憧れとは別の人間になりたい気持ちのことです。
例えば、アイドルグループの誰かに憧れるというのは、その人みたいになりたいと思う気持ちのことです。もちろん、そうはなれないと知った上でその人みたいになりたいと思っている、ということです。
女性が異性である男性に憧れるというのは、「私はあの男性みたいになりたい」と思っている、ということです。え?と思いますよね。私は女性でいたいのであって、何も男性になりたいわけではないと思いますよね。
でも、彼女はもう1人の自分として彼を見ているのです。もう1人の自分とは、遠い遠い昔に自分は男であったかもしれなくて、その今は失ってしまった彼みたいな男性だった自分を、片思いの彼に見ているんです。別の言い方をするなら、「彼、すごくかっこいい!憧れる」と思う彼とは、はるか昔に失ってしまった自分のことなのです。
もっとわかりやすく言うなら、アイドルグループの男性に憧れている女性は、前世か前々世かそのもっと前において、そのアイドルグループの男性みたいにイケメンだったのです。そのアイドルグループの男性のように、クールで無造作ヘアが似合う男性だったのです。その失くしてしまった自分を愛おしむ気持ち、それが憧れなのです。
では、蛙化現象に陥りやすい人の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
答えは、自分に絶望している人です。別の言い方をするなら、なんとなく淋しい気持ちを抱いていて、自己肯定感が低い人。自分のことを愛せていない、自分を多少傷つけないと生きている心地のしない人。
だからそのような人は、相手のことを平気で傷つけるのです。好きになった途端に嫌いと言うと、誰だって傷つくと知っています。でも嫌いと言う。すなわち、蛙化現象を自ら起こす。
それは端的に、当人が自分の手で自分を傷つけていることを意味します。自分のことを好きになれない人は、平気で相手のことを傷つけます。これは、主に若い人にありがちな恋愛あるあるです。
相手に憧れて何か月もずっと片思いして、やっとの思いで「好き」と言って、でもすぐに「やっぱ嫌い、気持ち悪い、顔も見たくない」と言う。
それだけならまだしも、他の人と仲良くしているところを、そのかつての憧れの対象に見せつける。そういう人は1人の時間に「私は何をしているのだろう。自分って最悪」と自己嫌悪に陥りますね。
つまり、当人は相手のことを傷つけることで自分のことを傷つけているのです。なぜなら、当人は自分のことを傷つけないと生きている心地がしないからです。
蛙化現象を克服するには、どうすればいいのでしょうか?蛙化現象は思春期特有のあるあるみたいなものだからと割り切って、克服しない?そういう選択もアリかもしれないですね。
私たちは、ひどい蛙化現象を起こしてしまったからこそ、他者の心の痛みを知り、そこからやっていいことと悪いことを学びます。人としてのふるまいを学びます。
そうして、分別ある大人へと成長してゆくのだから、何もせずに時が経つのを待つというのも、1つの方法でしょう。でも、できれば自分のことを好きになる方法を知った方がいいし、それを実践した方がいいです。
その方が被害者が減ります。被害者が多いと、罪悪感が増すゆえになかなか成長できないから。
今を生きること、これがまさに自分を愛し、蛙化現象を克服する方法です。今って、「今」と言ったそばから過去になりますね。ということは今この瞬間という時は、言えない=言語化できない時制、言い方を換えると感じるしかない時制です。
自分を愛せていない人、つまり蛙化現象を起こしがちな人というのは、今この瞬間という二度と戻らない時を感じていないのです。
頭の中で過去のことをずっと反芻しているのです。同時に未来も、過去に起きた不幸なことが起こるかもと怯えているのです。
そういう人は、今すぐ「今」を感じることです。例えば、外に出て空を見上げること。公園に行って彼と遊ぶこと。おいしいものを食べて「おいしいね」と言い合うこと。音楽を聴くこと。絵画を見ること。映画を見ること。友だちとお茶しながら会話を楽しむこと。
それらすべてに共通することは、むずかしく言えば言語化できないあれこれを感じる行為だということです。最後に。本稿はキルケゴールという哲学者の『死に至る病』という本をもとに書かれました。
キルケゴールは200年ほど前のデンマーク人ですが、彼は蛙化現象よりももっとひどい恋愛をしていました。そして、その罪悪感を生涯、その小さな胸に抱え続けました。
罪悪感を抱えつつ最期の日まで生きるのはとてもしんどいことなので、わたしたちはキルケゴール哲学をうまく使っていい恋愛をしようではありませんか。
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(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)
※参考
キルケゴール・S『死に至る病』鈴木祐丞訳(2017)講談社
ひとみしょう『自分を愛する方法』(2020)玄文社
蛙化現象について、心理学的に解説しているものはたくさんありますがなんかピンとこない…なんてことも。今回は心理学の大元であるとされている哲学の方面から一緒に見ていきたいと思います。
蛙化現象に陥る原因とは?
蛙化現象に陥る原因は憧れと嫌悪感です。片思いの相手のことがものすごく好きで、寝ても覚めても相手のことを考えてしまう。彼がまるで少女マンガに登場する白馬の王子様のように見える。このように感じることは、端的に憧れと呼ばれていますね。
この憧れから出発する現象が蛙化現象なのです。あろうことか片思いの相手が、自分に振り向いちゃうんですね。「あ、実は僕も君のことが好きだった」なんて言って。
その瞬間、当人の気持ちは冷めるだけでなく、相手に対して「何この人。私のことが好きなの?気持ちが悪い…!」と思ってしまう。片思いの相手に対して嫌悪感を抱く、これが蛙化現象です。
その原因は、憧れと嫌悪感です。ちなみに、当人の気持ちが冷めてしまうとの、相手に嫌悪感を抱いてしまう原因も憧れなんですね。憧れる気持ちが強いゆえに、気持ちの冷めと嫌悪が生まれるのです。では、憧れる気持ちとは一体なんなのでしょうか?
憧れる気持ちとは一体なんなのか?
憧れとは別の人間になりたい気持ちのことです。
例えば、アイドルグループの誰かに憧れるというのは、その人みたいになりたいと思う気持ちのことです。もちろん、そうはなれないと知った上でその人みたいになりたいと思っている、ということです。
女性が異性である男性に憧れるというのは、「私はあの男性みたいになりたい」と思っている、ということです。え?と思いますよね。私は女性でいたいのであって、何も男性になりたいわけではないと思いますよね。
でも、彼女はもう1人の自分として彼を見ているのです。もう1人の自分とは、遠い遠い昔に自分は男であったかもしれなくて、その今は失ってしまった彼みたいな男性だった自分を、片思いの彼に見ているんです。別の言い方をするなら、「彼、すごくかっこいい!憧れる」と思う彼とは、はるか昔に失ってしまった自分のことなのです。
もっとわかりやすく言うなら、アイドルグループの男性に憧れている女性は、前世か前々世かそのもっと前において、そのアイドルグループの男性みたいにイケメンだったのです。そのアイドルグループの男性のように、クールで無造作ヘアが似合う男性だったのです。その失くしてしまった自分を愛おしむ気持ち、それが憧れなのです。
蛙化現象に陥りやすい人の特徴
では、蛙化現象に陥りやすい人の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
答えは、自分に絶望している人です。別の言い方をするなら、なんとなく淋しい気持ちを抱いていて、自己肯定感が低い人。自分のことを愛せていない、自分を多少傷つけないと生きている心地のしない人。
だからそのような人は、相手のことを平気で傷つけるのです。好きになった途端に嫌いと言うと、誰だって傷つくと知っています。でも嫌いと言う。すなわち、蛙化現象を自ら起こす。
それは端的に、当人が自分の手で自分を傷つけていることを意味します。自分のことを好きになれない人は、平気で相手のことを傷つけます。これは、主に若い人にありがちな恋愛あるあるです。
相手に憧れて何か月もずっと片思いして、やっとの思いで「好き」と言って、でもすぐに「やっぱ嫌い、気持ち悪い、顔も見たくない」と言う。
それだけならまだしも、他の人と仲良くしているところを、そのかつての憧れの対象に見せつける。そういう人は1人の時間に「私は何をしているのだろう。自分って最悪」と自己嫌悪に陥りますね。
つまり、当人は相手のことを傷つけることで自分のことを傷つけているのです。なぜなら、当人は自分のことを傷つけないと生きている心地がしないからです。
蛙化現象を克服する方法
蛙化現象を克服するには、どうすればいいのでしょうか?蛙化現象は思春期特有のあるあるみたいなものだからと割り切って、克服しない?そういう選択もアリかもしれないですね。
私たちは、ひどい蛙化現象を起こしてしまったからこそ、他者の心の痛みを知り、そこからやっていいことと悪いことを学びます。人としてのふるまいを学びます。
そうして、分別ある大人へと成長してゆくのだから、何もせずに時が経つのを待つというのも、1つの方法でしょう。でも、できれば自分のことを好きになる方法を知った方がいいし、それを実践した方がいいです。
その方が被害者が減ります。被害者が多いと、罪悪感が増すゆえになかなか成長できないから。
自分を愛することで蛙化現象を克服する
今を生きること、これがまさに自分を愛し、蛙化現象を克服する方法です。今って、「今」と言ったそばから過去になりますね。ということは今この瞬間という時は、言えない=言語化できない時制、言い方を換えると感じるしかない時制です。
自分を愛せていない人、つまり蛙化現象を起こしがちな人というのは、今この瞬間という二度と戻らない時を感じていないのです。
頭の中で過去のことをずっと反芻しているのです。同時に未来も、過去に起きた不幸なことが起こるかもと怯えているのです。
そういう人は、今すぐ「今」を感じることです。例えば、外に出て空を見上げること。公園に行って彼と遊ぶこと。おいしいものを食べて「おいしいね」と言い合うこと。音楽を聴くこと。絵画を見ること。映画を見ること。友だちとお茶しながら会話を楽しむこと。
それらすべてに共通することは、むずかしく言えば言語化できないあれこれを感じる行為だということです。最後に。本稿はキルケゴールという哲学者の『死に至る病』という本をもとに書かれました。
キルケゴールは200年ほど前のデンマーク人ですが、彼は蛙化現象よりももっとひどい恋愛をしていました。そして、その罪悪感を生涯、その小さな胸に抱え続けました。
罪悪感を抱えつつ最期の日まで生きるのはとてもしんどいことなので、わたしたちはキルケゴール哲学をうまく使っていい恋愛をしようではありませんか。
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(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)
※参考
キルケゴール・S『死に至る病』鈴木祐丞訳(2017)講談社
ひとみしょう『自分を愛する方法』(2020)玄文社
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この記事を書いたライター
ひとみしょう
作家/コラムニスト/作詞家。キルケゴール哲学をベースに、なんとなく淋しい人に向けた希望論&恋愛論『自分を愛する方法』を上梓。全国の書店等で発売中。『ひとみしょうのお悩み解決』『ひとみしょうの男って実は』(Grapps)など連載多数。日本自殺予防学会会員。キルケゴール協会会員。